企業向け保険契約でのカルテルや、中古車販売大手ビッグモーター(BM)による保険金不正請求など不祥事が相次いだ損害保険業界。業界特有の構造問題が背景にあると見た金融庁は3月26日、大学教授や弁護士らをメンバーとする「損害保険業の構造的課題と競争のあり方に関する有識者会議」を立ち上げた。
6月までに報告書を取りまとめる予定だが、異例なのは会議を主導したのが、保険業法の改正など制度問題を担う企画市場局ではなく、金融機関の経営を日常的にモニタリングする監督局だったことだ。
損害保険ジャパンなど、大手各社に対する調査を通じ「保険代理店や顧客企業との癒着体質や、競争を阻害する不透明な商慣行など根深い問題が見つかったため」(監督局幹部)という。現行の保険制度や保険市場の問題点にも踏み込んで課題を洗い出し、再発防止に向けた新たな規制の枠組みづくりを目指す。
監督局は一連の損保を巡る不祥事について、昨年12月以降、行政処分を実施した。経営トップの人事や営業戦略まで及んだ処分はいずれも厳しい内容だったが幹部らは、これで溜飲を下げたわけではなかった。
大手各社に対する調査で、BMのような複数社の損保商品を販売する乗合代理店や、保険を販売する顧客企業側との〝癒着〟とも言える不健全な構造を把握したからだ。
監督局は有識者会議による報告書の取りまとめを終えた後、企画市場局と連携して金融審議会(首相の諮問機関)に舞台を移して制度改正を正式に議論。保険業法の改正などにつなげるシナリオを描く。今回のような不祥事を二度と起こさないため、損保とその代理店、顧客企業による癒着構造を断ち切る実効性のある規制の枠組みを整えられるか。