米国商務省産業安全保障局(BIS)は4月4日、中国向け半導体関連の輸出管理規則を明確化する暫定最終規則(IFR)を発表し、同日付の官報で公示、即日発効した。
これによりBISは2023年10月に発表した中国向け半導体関連の輸出管理規則を強化改定する形で、以下の2項目を新たに追加した。
- BISへの輸出前通知が必要な集積回路を組み込んだコンピュータおよびその他の最終製品も輸出前通知が必要
- 最終的に中国の半導体製造装置に組み込まれるために輸出される部品およびコンポーネントは、最初の輸出の際にBISからの輸出許可(ライセンス)が必要
コンピュータや半導体製造装置を対象として半導体輸出規制をさらに強化するこの新たな規制は、特定の国(中国、マカオ、北朝鮮、ロシア、イランなど)や企業が米国の規制を回避して機密性の高いチップ技術や機器にアクセスすることを防ぐことを目的としているという。こうした厳格な管理に加えて、米国政府は、さらに広範囲の新たに発売されるAI半導体の対中輸出規制を行おうとしているが、TrendForceが業界への実際的な影響は最小限にとどまるとするレポートを発表している。
この輸出規制対象には、NVIDIA A100/H100、NVIDIA A800、H800、L40、L40S、RTX4090、AMD MI250/300シリーズなど、すでに規制対象となっているNVIDIAおよびAMDの AI半導体だけでなく、NVIDIAのH200、B100、B200、GB200、AMDのMI350シリーズなどといった次世代品も含まれる。こうした新規性に応じる形でHPCメーカーは、NVIDIAの中国向けAI半導体となるH20/L20/L2など、新しい総合処理パフォーマンス(TPP)とパフォーマンス密度(PD)の規制に準拠した製品を搭載したシステムの開発を進めている模様だが、これらも引き続き輸出規制の対象となる。
コンピューティング能力の限界を超える製品に対するより厳格な審査を強調する規制の強化にもかかわらず、これらの更新による業界への実際の影響はわずかに増大する程度であるとTrendForceは予想しており、今回の更新は、新たな重大な障壁を生み出すのではなく、既存の規制の抜け穴を埋めることを目的としている点を強調している。
なおTrendForceでは、こうした取り組みを通じて米国は中国の先端技術へのアクセスを開発を阻止し、技術的優位性を確保しようとしているが、長期的に見た場合、これらの措置は中国のAI半導体や先端製造プロセスの開発の進歩を図らずも加速させる可能性があると指摘している。