デル・テクノロジーズ(以下、デル)は4月10日、中堅・中小企業が大学や学術機関などと協力して革新的なプロジェクトやイニシアティブの実現を共同で目指すためのプラットフォーム「DXイノベーションコネクト」を提供開始することを発表し説明会を開いた。

中堅・中小企業と大学を結ぶプラットフォーム

デルは2020年から、中堅・中小企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進を支援するべく、奈良先端科学技術大学院大学などと共同で企業参加型のコンテスト「中堅企業DXアクセラレーションプログラム」を開催している。このプログラムでは、事業変革に必要なデジタルスキルを有する人材の育成を進めてきた。

しかし、事業変革の第一歩となるPoC(Proof of Concept:概念実証)フェーズに進む際には、企業の持つ知見や知財が高いレベルで求められ、コンサルティングファームなどに相談する場合は高額なコストが必要になることから、人材育成を目的とした同プログラムだけではDX推進を後押しすることが難しい状況だった。

これに対し、今回開始するDXイノベーションコネクトは、企業と共同研究を進めたい大学や学術機関が持つ知見と、DXを進めたい中堅・中小企業をマッチングすることで、企業規模に見合うコストでのPoCを支援する仕組みだ。

デルによると、プログラムに参加する大学や研究機関は、企業との共同研究を実施するきっかけを得ることができる。一方で、民間企業は大学などが持つ研究成果を使いながら比較的安価にPoCを実施できる利点があるという。

さらに将来的には、自治体なども参画して各地域におけるDXエコシステムの創出も狙う。地域の銀行や金融機関もプログラムに巻き込みファンドを形成して、地元企業への融資および投資機会を提供していくとしている。

  • DXイノベーションコネクトの取り組み全体像

    DXイノベーションコネクトの取り組み全体像

デルの常務執行役員で公共営業統括本部長を務める諸原裕二氏は「産学官の新たなエコシステムを作り、地方創生はもとより中堅・中小企業のデジタル変革を進めることで、国内企業、ひいては日本全体の国際競争力強化につながれば」と期待を見せていた。

  • デル 常務執行役員 公共営業統括本部長 兼 データセンターソリューションズ事業統括本部長 諸原裕二氏

    デル 常務執行役員 公共営業統括本部長 兼 データセンターソリューションズ事業統括本部長 諸原裕二氏

マッチングまでの具体的な流れ

同社がこれまで実施していた従来のDXアクセラレーションプログラムは、無くなるわけではない。DXアクセラレーションプログラムで提供してきたDX人材育成は「DX Learning Community」として引き続き提供する。今回発表したDXイノベーションコネクトは、より上位の広い領域をカバーする取り組みとして展開する。

具体的な取り組みとしては、大学などが研究成果や技術要素をマッチングサイトに掲載し、中堅・中小企業がDXに関するテーマや課題に適した技術や実績を確認して申し込むことで、両者のマッチングが成立する。なお、マッチングサイトの運用は奈良先端科学技術大発のベンチャー企業であるdToshが担う。

  • プラットフォームの概要図

    プラットフォームの概要図

参加を希望する中堅・中小企業はマッチングサイトにアクセスして専用のフォームから申し込むと、まずはDXイノベーションコネクト事務局との打ち合わせが行われる。ここで具体的な相談内容を明確した上で、実際に大学を含めた三者での打ち合わせ、および実施内容と費用のすり合わせへと進む。

  • 申し込みから支援開始までの流れ

    申し込みから支援開始までの流れ

中堅・中小企業向けに2つの生成AIソリューションを発表

デルはDXイノベーションコネクトの開始に際して、以前から提供しているPowerEdgeサーバを利用したAIソリューションに加えて、新たにLlama2およびAzure OpenAIを活用した2つの生成AIソリューションの提供を開始すると発表した。

ローカル生成AIパッケージ Azure OpenAI

Azure OpenAIを活用したローカル生成AIパッケージでは、社内外からの問い合わせに対応するチャットボットなどのインタフェース構築を支援。OpenAIが提供するAIエンジンをベースに、各社が持つ業務情報や問い合わせのログを組み合わせて窓口対応の自動化を促進する。

ユーザーの拡大や他支店への展開などデータ量の増加を見据えて、業務情報や問い合わせログをAzure Stack HCIなどオンプレミスに格納してハイブリッド化することでコストを抑えるためのパッケージも用意しているという。

  • Azure OpenAIパッケージのシステム概要

    Azure OpenAIパッケージのシステム概要

PoCの事前開発においては業務分析や要件定義に65万円が発生する。プラットフォーム利用料は基本料金が0円だが、独自データ量が3ギガバイト以上の場合は従量課金制となる。ライセンス利用料は10ライセンスで月額1000円程度。

本稼働に移行するとプラットフォーム利用料として月額10万円が発生。独自データ量に応じて3ギガバイトごとに追加費用が必要となる。ライセンス利用料は1ライセンス当たり月額1000円から。

  • Azure OpenAIパッケージ料金表

    Azure OpenAIパッケージ料金表

ローカル生成AIパッケージ Llama2

ローカル生成AIパッケージ Llama2は、デルのPower Edgeサーバ上にLlama2をベースとした生成AIを搭載する、オンプレミスモデルのローカル生成パッケージ。約6カ月間のPoC期間中はサーバ利用に伴い158万円が発生。データベース設計のコンサルティングから環境構築なども対応する。PoC終了後は保守チケット枚数に応じた費用が発生。

  • Llama2パッケージのシステム概要

    Llama2パッケージのシステム概要

  • Llama2パッケージ料金表

    Llama2パッケージ料金表