島津製作所は4月8日、バイオ燃料の品質などに影響する含酸素および含窒素成分だけを、原料に含まれる多数の成分から選択的に検出する性能を持つ元素選択式ガスクロマトグラフ質量分析計「ELEM-SPOT(エレムスポット)」を発売することを発表した。
新たなバイオ燃料の開発へ含酸素・含窒素の検出ニーズが増大
近年、カーボンニュートラル実現に向けた新エネルギーに関する研究が進展しており、特にサトウキビやトウモロコシの可食部を利用した“第1世代”ではなく、サトウキビの皮や茎、藻類などの非可食部や廃棄プラスチックなどを利用した“第2世代”のバイオ燃料の開発に向けた研究開発が盛んになっている。これらのバイオ由来原料やリサイクル原料には、化石燃料とは異なる未知の成分が多く含まれており、酸素や窒素がバイオ燃料の製造効率や品質低下につながるものの、多数の未知成分中から目的成分のみを検出するのが困難な点や、効率的な評価・分析手法が確立されていない点など、さまざまな課題が残されていた。
島津製作所は2021年から、フランスの石油大手であるTotalEnergies、フランスのポー大学、スペインのオビエド大学と共に、クリーンエネルギー分野における包括的な共同研究を進めていたとのこと。そして先述の背景から、TotalEnergiesなど3者が持つ“バイオ燃料の含酸素成分の特定”に関する特許技術と、島津製作所が保有する高性能のガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)技術を融合させ、ELEM-SPOTを共同開発したという。
業界最高レベルの検出感度で業務効率化に貢献
同製品は、GC-MSと酸化炉で構成され、バイオ由来原料やリサイクル原料に含まれる化合物をGCで分離したのち、酸化炉で酸化分解し、MSで選択的に酸素や窒素だけを検出する。この時、酸化ガスに同位体酸素を用いて酸化分解した後に専用のデータ解析ツールを用いることで、含酸素化合物を正確に特定することが可能。含酸素・含窒素成分を正しくモニタリングして処理することで、触媒の品質劣化が抑制され、頻繁な触媒交換が不要になるなど、業務効率化につながるとする。
また新製品では、昨今の微量成分に対する検出ニーズに対応するため、業界最高レベルの感度で含酸素および含窒素成分が検出できるとしている。併せて、基本性能やユーザビリティの面では従来の島津製作所の主力製品を継承しており、含酸素・含窒素成分の特異的な検出に加え、酸化炉を用いない通常の分析も可能とのこと。それらの設定はソフトウェア上で簡便かつ迅速に設定可能だという。
島津製作所はELEM-SPOTの販売にあたり、販売価格を3500万円~(税別)とするとともに、1年間で国内外合わせて15台の販売を目指すとのこと。また同社は、引き続き同製品のユーザビリティ向上に取り組んでいくとしている。