名古屋大学病院とAcompanyは4月9日、東北大学病院、北海道大学病院と共同で連合学習を用いた安全な医療AIの構築に関する研究を開始することを発表した。同研究により、多施設間の医療データを用いたAI開発の安全な連携基盤の構築を目指す。
研究背景
近年、AIの医療分野への活用が注目されている一方で、個人情報保護の観点から、複数の医療機関が保有する患者データを安全に結合して学習することが課題となっている。
医療AIの高度化には、多施設の豊富なリアルワールドデータ(RWD)を活用することが不可欠であるものの、従来の手法では個人情報の漏洩リスクが高く、実用化が進んでいないという。
今回の研究は、分散しているデータを1カ所に集めずに、AIモデルを分散している環境に配布しながらセキュアにモデリングする「連合学習」という新しい暗号技術を用いることで、これらの課題解決を目指すもの。
連合学習を利用することで、データを秘匿化したまま機械学習を行うことができるため、個人情報を第三者に開示することなく、複数施設の医療データを安全に結合して学習できる可能性があるという。
研究内容
今回の研究では、名古屋大学病院と東北大学病院が保有する、消化管出血の患者データを連合学習で秘匿化・学習し、追加の医療行為が必要かどうかを推定するAIモデルを構築・評価する。
Acompanyはプライバシーテックの実用化研究開発を通じて得られた技術的知見と、連合学習ソフトウェアを提供し、名古屋大学病院と東北大学病院は、医学的知見と擬似的な患者データを提供する。
今回の研究を通じて、連合学習を用いた多施設のRWDの安全な結合による医療AIモデルの実用性を明らかにするとともに、処理時間やAIモデルの精度など、実運用に耐えうるかどうかを検証する。
Acompanyは、同研究を通じて得られる知見を活かし、プライバシー保護と医療AIの両立に向けた取り組みを一層加速させ、医療の高度化と個人情報保護の両立を実現する新たな一歩となるように邁進していくとしている。