米バイデン政権は4月8日(現地時間)、CHIPS and Science Act(CHIPS法)に基づく、米商務省と台湾のTSMCの間の予備的覚書(PMT)合意を発表した。米政府は、TSMCの米国での最先端半導体製造施設建設を支援するために最大66億ドルの助成金を提供し、また最大50億ドルの融資を提案している。TSMCは、米国内で3番目の工場の建設と、台湾以外で初めてとなる2nmプロセス技術を用いた半導体の米国工場での生産を計画していることを発表した。
生産拠点の分散を進めるTSMCは、2020年5月に米アリゾナ州フェニックスでの半導体工場の建設計画を発表し、同年11月に第1工場の建設に着工。さらに2022年12月に第2工場の建設を開始した。当初は2024年に第1工場で4nmプロセスの半導体ウェハーの生産を開始する予定だったが、熟練労働者の不足などにより、2025年前半に延期された。
米政府はCHIPS資金を用いて人材育成にも注力しており、その支援を受けてTSMCは米国での最先端半導体製造を支える労働力の構築を強化する。TSMCは8日、2028年の生産開始を目指す第2工場について、3nmプロセスに加えて2nmプロセスの半導体も生産する計画を発表した。第3工場は2030年までに生産を開始する計画で、同工場は2nmまたはそれよりも最先端のプロセス技術を用いた製造施設になる。
TSMCによると、第3工場の新設により、同社によるアリゾナ州フェニックス工場への総投資額は650億ドルを超え、米国における最大のグリーンフィールド投資となる。3つの工場で、約6,000の高技術・高賃金の雇用を創出し、また2万人以上の建設関連雇用や、サプライヤーなどによる間接的な雇用も数万規模で創出される見通しである。
CHIPS法は、地政学的リスクの高まりや新型コロナウイルス感染症によるサプライチェーンの混乱を背景に、2022年に成立し、2024年2月に実施され始めた。米国内での半導体製造の拡大を目指し、雇用創出を図るための財政支援を行う。これまで、英BAE Systems(防衛関連技術:助成金3500万ドル)、米Microchip Technology(マイクロコントローラ/メモリ/アナログICなど:1億6200万ドル)、GlobalFoundries(半導体製造サービス:約15億ドル)、米Intel(半導体製造:最大85億ドル)と合意しており、TSMCは5社目の助成金受領企業となる。