台湾の半導体市場調査会社であるTrendForceが、4月3日に台湾で発生した地震における半導体工場の4月4日時点での影響を調査した結果を発表した。
それによると、多くの半導体工場が震度4の揺れが発生した地域にあったが、その多くが耐震対策を施してあるため、ほとんどは各種の検査後、操業を再開しているという。一部の工場やラインで、緊急自動停止や地震の被害による仕掛りウェハの破損があったものの、操業再開後の各前工程工場の稼働率は平均で50~80%程度まで上昇、各社の業績への影響は軽微の見込みだとしている。
製品セグメント別に見るとDRAMは、地震の被害が比較的大きかったのは台湾最北部の新北市にあるNanya Technology(南亜科技)のFab 3AとMicron Technologyの林口工場だという。NanyaのFab 3Aは20/30nm DRAMプロセスで生産を行っており、同社として最新世代となる1B-nm(10nm台の2世代目)DRAMプロセスが開発中である。一方のMicronの林口工場と台中工場は、社内で1つのシステムに統合されたDRAM量産の重要拠点群で、すでに同社最新世代の1β-nm(10nm台の5世代目)DRAMプロセス技術を導入した製品の量産が進められている。どちらの工場も数日以内に完全復旧できる見込みで、HBMを含む生産は台湾で継続される。ほかのDRAMファブも停止した製造装置の検査を経て、段階的に操業を再開している。その他のPowerchip Semiconductor Manufacturing(PSMC)ならびにWinbondからは損害情報は公表されていない。
ファウンドリに関しては、TSMCが震度4の範囲に、150〜200mmレガシーラインとしては新竹にFab2、Fab3、Fab8、台南にFab5を、300mmラインとして新竹にFab12AおよびFab20をそれぞれ有しており、いずれの工場も地震発生直後に各種装置が緊急停止した。しかし、装置自体の損傷は確認されず、避難した作業員も現場に復帰、徐々に通常稼働に戻りつつあるという。ただし、研究開発本部の試作ラインのあるFab12B(新竹)にてパイプが破損し、設備に浸水被害が発生。現在、試作が進められている2nmプロセスの進展に影響を与る可能性があり、状況次第では新たな装置の導入が必要になる可能性があり、設備投資費用が増額される可能性もある。
TSMCの5/4/3nmプロセスファブ(台南)は、地震の影響が軽微だったことから、従業員を避難させることなく、地震発生から6~8時間ほどで稼働率90%以上の状況まで復旧しているという。また、同社の先進パッケージング( CoWoS)ファブ、特に龍潭のAP3と竹南のAP6は、地震後の検査でチラーユニットへの浸水損傷が判明したが、バックアップ設備を稼働させることで業務に影響することなく、操業を再開したという。
このほかUMCが新竹に1つの150mm工場と6つの200mm工場、台南に1つの300mm工場を稼働させ、主に90~22nmプロセスでの量産を行っているほか、PSMCが新竹と苗栗地域にて300mmによるDRAMならびに200mm/300mmでのロジックファウンドリを稼働、Vanguard International Semiconductor(VIS)が新竹で3つの200mm工場と桃園で1つの200mm工場を稼働させているが、いずれも検査と従業員の避難のための短期間の操業停止はあったものの、その後随時操業を再開している。