明治は4月3日、妊娠中の母親の種実類(主にナッツ)の摂取が出産後の子どもの5歳時における仲間関係問題の発生リスクを低下させる可能性があることを確認したと発表した。
同成果は、明治 乳酸菌研究所と、愛媛大学大学院 医学系研究科 疫学・公衆衛生学講座の三宅吉博教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、小児消化器病および栄養学に関する全般を扱う学術誌「Journal of Pediatric Gastroenterology and Nutrition」に掲載された。
以前から、妊娠中の母親の食事をはじめとする環境要因が、生まれた子どもの精神行動発達に重要な役割を果たしているといわれていた。そこで今回の研究では、三宅教授が2007年にスタートさせた出生前コホート研究「九州・沖縄母子保健研究」の5歳時における追跡調査に参加した1199組の母子から得た情報を対象として、詳細な解析を行うことにしたという。
まず妊婦の栄養情報については、妊娠中に食事歴法質問調査票を用いて調査を実施。また、子どもの精神行動発達における情緒問題、行為問題、多動問題、仲間関係問題、および低い向社会的行動については、「子どもの強さと困難さアンケート」を用いて評価が行われた。
そして、妊娠中に種実類を摂取しなかった群を基準とした場合の、種実類を摂取した群における各精神行動発達問題の生じるリスクを比較。その際、非栄養要因である母親の年齢、妊娠週、居住地、子数、両親の教育歴、家計の年収、妊娠中の母親のうつ症状、妊娠中の母親のアルコール摂取、妊娠中の母親の喫煙、子どもの出生体重、性別、母乳摂取期間および生後1年間の受動喫煙の影響の補正が行われた。さらに栄養要因として、種実類と仲間関係問題との関連において、過去に仲間関係問題のリスクを低下させることが明らかになっている総大豆製品摂取の影響も補正された。
妊娠中に種実類を摂取しなかった群と比べて摂取した群の補正オッズ比は0.64と、有意な関連が認められたという。なお、オッズ比とは、関連の強さを表す指標のことだ。同比の見方は、値が1の場合は関連がまったく無いことを示す。今回のように1より小さい場合はリスクが下がる、つまり予防的であることが示されている(1より大きい場合はリスクが上がる)。小さいにしろ大きいにしろ、値が1より離れるほど、関連が強いことが示されている。
この結果から、妊娠中の種実類の摂取は、5歳の子どもの仲間関係問題のリスクを低下させる可能性があることが示されたとした。ただし、今回の結果を確認するためには、今後のさらなる研究が必要としている。
同社は、母子栄養に関する多角的研究の1つである「九州・沖縄母子保健研究」に引き続き参画し、妊娠中の母親の栄養摂取と子どもの精神行動発達の関連性を明らかにすることで、母親と子どもの栄養に関する基盤情報を蓄積していくとする。さらに、それらの基盤情報をもとに、周産期の女性に適した栄養食品の開発と栄養情報の提供を行っていくとした。