電通総研は4月4日、東京大学医学部附属病院とともに、AIを活用した口腔癌の画像診断支援システムの研究・開発に取り組み、擦過細胞診(病変部の表面部分を綿棒やブラシなどで擦ることにより、細胞を採取する方法)の代替検査手法の確立を目指す。
これにより、口腔癌の早期発見はもちろん、患者の検査による心身の負荷軽減、医療の地域格差の緩和、予防医療などに貢献することが期待される。なお、同共同開発予定の口腔癌診断支援システムは、特許出願中となっている。
共同開発の概要
口腔癌は他領域疾患と比較して視診で得られる情報が多い一方で、類似症状を呈する疾患も多く、口腔外科や耳鼻咽喉科などの専門医師や歯科医師でなければ診断が困難であり、専門医はいまだ少ない状況となっている。そのため、罹患者に対する正確な診断が下されず、早期発見・早期治療開始に至っていないという課題があるという。
加えて、現在の口腔癌診断の基盤となっている擦過細胞診は患者への負担が少なく、スクリーニング検査(無症状の者を対象に、疾患の疑いのある者を発見することを目的に行う検査)として有用である一方で、病理医や臨床検査技師による観察を必要とするため診断までに時間を要すること、血液や唾液などの影響を受けるため確度が高くないこと、一般歯科医院に十分に浸透していないなどの課題も顕在している。
このような背景を踏まえ、今回の共同研究では、口腔外科領域では病変部を中心に一眼レフカメラなどを用いて撮影を行い、その画像を診療記録として残すことが多いことに着目したという。
2010年から2021年にかけて東京大学医学部附属病院 口腔顎顔面外科・矯正歯科を受診し、擦過細胞診および写真撮影を行なった20歳以上の患者の撮像画像を基盤とし、電通総研が開発したAI技術を掛け合わせることにより、口腔癌の早期発見を支援するシステムの共同開発に取り組んでいきたい考え。