TrendForceによると、2024年4月3日午前7時58分に発生した台湾東部沖のマグニチュード7.2の地震の影響から、台湾のディスプレイパネルメーカーAU Optronics(AUO)ならびにInnoluxのほとんどの製造装置が稼働停止状態となっているという。
それによるとAUOのすべてのパネル工場は設備の検査ならびに修理のために操業を停止しており、4月3日夕方時点で復旧作業が進められている状態。Innoluxも、ほとんどの工場が地震の影響から設備の稼働を停止するなどの措置を取っているが、例外的に同社のFab6の製造設備に対する影響は少なかった模様である。
このように個々の工場で状況が異なっているが、TrendForceでは、少なくともパネルの生産スケジュールに1~2日ほどの影響が生じると推定されるとしている。地震の影響が2日間続くと仮定すると、全生産量(表面積換算)の1.2%が影響を受けると予測されるとされ、多くのパネル工場が生産中断を余儀なくされているため、あらゆるディスプレイを活用するアプリケーションで生産量がある程度減少するとTrendForceは予想している。
現在、TV分野を中心に高いパネル需要があり、TrendForceでは地震発生前時点でAUOの4月の稼働率を85%、Innoluxの稼働率を83%程度まで高まると予測していたものの、今回の地震の影響により、下方修正される可能性があるとしている。
TV用パネルを製造する工場は、地震前にほぼフル稼働まで稼働率を高めていたと見られており、今回の地震の影響により一部のTV用パネルの出荷に影響が出ることが予想される。また、TV用パネル価格は4月まで上昇し続けると予想されていた一方、中小型TV用パネルの需要は低迷しつつあった。しかし、今回の地震の影響から、中小型TV用パネルの価格が上昇し、それが5月まで続くのかどうかを見極める必要があるとTrendForceでは指摘しているが、工場の操業停止期間が1週間以内に留まれば、パネル価格への影響は限定的なものになると予想している。
一方のITパネル市場においては、最近モニター向けに在庫需要が高まりを見せており、地震後の再稼働でそうした需要を満たせるまで回復できるかは不透明な状況だという。最近は需要の高まりからモニタ向けパネル価格も上昇していることから、TrendForceでは引き続き、状況を監視し、需要と価格の回復と全体の生産能力に対する地震の影響によるさらなる価格上昇が生じるかどうかの見極めを行っていくとしている。
また、パソコン用パネルに関しては、需要の弱含みが続いており、パネルメーカーも十分な在庫を持っているため、今回の地震の影響は限定的だが、パソコン用パネル需要は第2四半期以降、徐々に回復していくことが予想されるため、価格を引き上げたいパネルメーカーにとって、地震の生産能力に対する影響を価格上昇に結び付けるかどうかの見極めるため、今後1~2か月の動向を注視する必要があるとTrendForceでは指摘している。