経済産業省は、1月の能登半島地震で被災した伝統工芸品の製造事業者を支援するため、職人が一時的に使用する仮設工房の設置費用を全額負担することを決めた。特に被害が甚大だった石川県輪島市では、日本を代表する漆器「輪島塗」の工房が多数損壊し、伝統の存続が危ぶまれている。多くの職人が避難を余儀なくされている実態もあり、作業場所を確保することで再興を後押しする考えだ。
仮設工房整備は、中小企業基盤整備機構が行う「仮設施設整備支援事業」の一環となる。複数の店舗・事務所が入居する仮設施設を自治体が設置する際、設計・工事費用やリース費用などの全額を補助するものだ。新潟、富山、福井、石川4県や各県の市町村が対象で、入居費は原則無料とする。
事務所や店舗は1区画の面積を最大100平方メートルとする一方、伝統工芸品の仮設工房は一定の作業スペースが必要なことから、同200平方メートルまで認める。
敷地は原則として公共用地だが、民有地を借りて設置することも可能だ。
利用期間が終わった後は、市町村の会議室などとして転用することも認める。補助の申請期限は2025年2月末までとした。既に、石川県輪島漆芸美術館(輪島市)の敷地内に4月に仮設工房を設置することが決まっている。
輪島塗は100以上の工程に分かれ、専門分野に特化した職人の分業体制で製造する。避難などで職人が離散すれば工程が完結せず、製造が困難となる。能登半島には、輪島塗の他にも「珠洲焼」などの工芸品があり、いずれも大きな被害を受けた。
伝統工芸品分野は小規模な事業者が多く、経営体力が弱い。能登半島地震の発生から約3カ月が経過しても、製造再開のめどが立っていないケースがあり、廃業を増やさない取り組みが求められている。経産省は、地震で壊れた道具や原材料の調達に対し最大1千万円の補助を行う他、販路開拓も含む総合的な支援を行う方針を示している。