トヨタ自動車は、愛知県の豊田市と岡崎市にまたがる山間部に建設を進めてきた研究開発施設「Toyota Technical Center Shimoyama」の全面運用を3月25日より開始したことを発表した。
同施設は、下山の自然地形を活かした高低差と多数のカーブが入り組んだ厳しいテストコースを持ち、ここでクルマを徹底的に走らせることで、“道”がクルマを鍛え、クルマをつくる人を鍛える現場として、トヨタにおける「もっといいクルマ」の車両開発を牽引するとしている。
今般の完成に向けては、造成工事後の2018年4月より施設の建設が開始され、2019年4月にはカントリー路を備えた中央エリアの運用がスタート。2021年10月には、高速評価路や世界各地の特殊な路面を再現した特性路などを備えた東エリアの運用が順次開始された。トヨタは2020年に発表したレクサスISを皮切りに、新型車の開発を同施設で行っており、テストコースの走行によって鍛え上げられたクルマを世界中に届けてきたとする。そして今回、新たに車両開発棟や来客棟を備えた西エリアが完成し、全面運用に至ったとした。
車両開発棟は、レクサスカンパニーおよびGRカンパニーの事業/開発拠点となり、企画・デザイン、開発・設計、試作・評価などあらゆる機能のメンバーがクルマを中心に集結。テストコース走行を経てクルマの課題を見つけ、改良を繰り返しながら車両の開発を進めていくという。また最先端のデジタル機器も活用するといい、リアルなクルマづくりとデジタルとを融合させた開発に取り組んでいくとしている。
そして来客棟は、ビジネスパートナーやサプライヤーとの垣根を越えた共創の場として、開発拠点ならではのクルマを間近に感じた交流によって新たな発想を促し、イノベーションに向けたオープンな空間として活用するとのことだ。
また2023年3月には東エリアに環境学習センターが完成しており、環境保全に向けた里山体験イベントなど、地域住民との交流の場としても活用しているという。
なおToyota Technical Center Shimoyamaの建設にあたっては、環境保全の取り組みとして、敷地面積(約650ha)のうち約6割で土地本来の森林を残し保全を行うことに加え、新たに緑地を造成するなど、自然環境の適切な維持・管理に努めてきたとのこと。トヨタは、今後も有識者や地元自治体、地域住民との協力により、森林や谷津田などといった里山環境の保全活動を行うことで、自然と調和する施設として地域との共生を進めていくとしている。
トヨタの豊田章男会長は、構想がスタートしてから約30年が経過し、およそ3000億円の投資によってようやく全面運用に至った新施設のお披露目に際し、「生産工場ではありませんが、これから“下山産のクルマ”が世界のあらゆる道を走り、たくさんの人を笑顔にしてまいります」と施設の重要性についてコメント。約3000人の従業員が働く同施設にて、「私もマスタードライバーとして“下山の道”をたくさん走ってまいります」と話した。