NTT西日本は4月1日、代表取締役社長 社長執行役員に同日に就任した北村亮太氏による記者会見を開催した。同社は昨年に約120万件の顧客情報が不正に持ち出され、今年3月に再発防止策を発表した。これを受け、北村氏は冒頭「信頼回復に全力で取り組む」と語った。

  • NTT西日本 代表取締役社長 社長執行役員 北村亮太氏

北村氏は、自身の経営観について、渋沢栄一氏の名言「道徳なくして経済なし。経済なくして道徳なし」になぞらえて、次のように説明した。

「道徳なくして経済なしは『なすべからざることをしない』、企業としての健全性と捉えている。また、経済なくして道徳なしは『なすべきことをする』、つまり社会の課題解決・価値創造と事業成長の両立として捉え、これらを両立することで、安定した経営基盤の確立を目指す」

「企業としての健全性」実現に向けた施策

北村氏は、信頼回復に向けて、企業風土の改革と情報管理・セキュリティの徹底に取り組むと説明した。

企業風土の改革にあたって、社員、組織、マネジメントの3つの側面から施策を講じ、パーパス・行動指針・行動規範から成る「NTT西日本スピリッツ」を浸透させる。北村氏は「先般の事件はリスクマネジメント不十分だったことが要因として大きいので、手法やプロセスまで踏み込んでガバナンスを強化する」と述べた。

  • 「企業としての健全性」実現に向けた施策

「情報管理・セキュリティの徹底」に向けては、今年3月に発表した再発防止策を着実に実行するという。再発防止策として、「リスクの可視化」「リスク箇所の最小化」「監視の高度化・典型の徹底」「情報セキュリティ推進体制の強化」の4点を掲げている。

「今後は、システムごとのセキュリティ情報を台帳化してチェックを開始し、ゼロトラスト環境を全社に広げて監視の高度化を図る。また、7月に新たな組織を立ち上げ、妥当性や実効性を監査部門で担保する。四半期で全30支店を訪問する予定としており、対話や情報発信を高めて信頼回復に努める」(北村氏)

  • 「情報管理・セキュリティの徹底」に向けた施策

社会の課題解決・価値創造と事業成長

社会の課題解決・価値創造については、事例として、「Actibaseふくい」「都市OSとデータ連携基盤を通じた価値創造」「2025大阪・関西万博への参画とその後のビジネス展開」が紹介された。

「Actibaseふくい」は、観光を起点とした三国湊エリアにおける活性化に関する取り組み。北村氏は「北陸新幹線が延伸し、起爆剤として期待されていることから、地域創生かの事例を増やしたい」と話していた。

「都市OSとデータ連携基盤」は現在、10の自治体に提供されている。地域経済圏全体でのデータ連携が求められており、アプリから収集されるデータをもとに市民サービスを開発していくという。

「大阪万博」においては、NTTグループとしてITインフラ、ICTプラットフォーム、セキュリティ、インフラ設計などさまざまな形で参画する。北村氏は「大阪万博」をトリガーに、Web3やIOWNの実装を推進して生きた」と述べた。

さらに、北村氏は「IOWN APN(Innovative Optical and Wireless Network All Photonics Network)」による価値創造について説明した。「IOWN APN」は大容量、低消費電力、低遅延を特徴としている。

北村氏は、「クラウド、AIの進展と共に、通信トラフィックや電力消費が増えることが予想され、通信遅延の解消と安定した通信が求められている。将来の課題として、IOWN APNが必要になると考えており、IOWN APNの社会実装にグループを挙げて取り組む」と述べた。

「安定した経営基盤の確立」に向けた施策

安定した経営基盤の確立に向けては、「顧客基盤の維持・拡大」「法人事業の強化」「新事業の創出・拡大」「コスト競争力の強化」に取り組む。これらの事業における抱負について、北村氏は、次のように説明した。

「これまで培ってきたアセットのアップデートと競争力がポイントとなる。光サービスのシェアにこだわり、高付加価値サービスで競争力を上げていく。法人事業は今後数年でどれだけ成長できるかがカギになる。1000人規模のクラウド人材を育成してきたので、付加価値の高いクラウドマネージドサービスへの転換を目指す」

  • 「安定した経営基盤の確立」に向けた施策

さらに、北村氏は取り組むべきこととして、DX(デジタルトランスフォーメーション)による顧客体験(CX)と生産性向上を実現することを挙げた。「顧客起点でプロセスを見直し、人手を介した煩雑なプロセスを解消し、生産性向上につなげていく」と同氏。

そのためには、「相当の改革と覚悟が必要だが、スピード感をもって推進していきたい」と、北村氏は社長就任に対する意気込みを語っていた。