自動車用先端SoC技術研究組合(ASRA)は3月29日、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の公募案件である「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/先端半導体製造技術の開発(委託)」に対して提案していた「先端SoCチップレットの研究開発」の委託先として採択されたことを発表した。
また、ASRAに新たにスズキ、日立Astemoの2社が3月28日付で参画したことも併せて発表。この2社の参画によりASRAの参加企業は14社となる。
ASRAは自動車のさらなる知能化・電動化を実現する車載HPCの実現に向けたチップレット技術の研究開発を目的に2023年12月1日に設立された技術研究組合。設立当初の参加企業は、自動車メーカーから「トヨタ自動車」「SUBARU」「日産自動車」「本田技研工業(ホンダ)」「マツダ」の5社、電装部品メーカーから「デンソー」「パナソニック オートモーティブシステム」の2社、半導体関連メーカーとして「ソシオネクスト」「日本ケイデンス・デザイン・システムズ」「日本シノプシス」「ミライズテクノロジーズ」「ルネサス エレクトロニクス」の5社の12社で、今回のスズキと日立Astemoの参画により合計14社の体制となる。
チップレット技術を車載SoCに適用するためにはASRAでは、「複数チップレットの境目を見えなくするハードウェア/ソフトウェア技術」、「機能安全・リアルタイムを実現するハードウェア/ソフトウェア技術」、「車載信頼性技術」の3つの要素技術開発が必要としており、その実現に向けて2024年度中に車載システムアーキテクチャの要件定義として、車載特有の要件の明確化の実施、チップレットSoCの要件定義としてハードウェア/ソフトウェアの要件定義ならびにアーキテクチャの検証の実施、そしてチップレットSoC開発技術としてのチップレット設計、2.5Dパッケージ開発、チップレット/チップ間通信技術の開発の実施をそれぞれ進め、年度内の要件ならびに目標値の設定、詳細開発計画をフィックスさせることを目指すとしている。
また、各種の要件定義を踏まえて2025年度以降に開発を本格化することを計画。まずはデータセンター向けチップレット技術をベースに試作チップを作成し、評価を実施し、車載向けに不足する能力などの洗い出しを行ったうえで、それを実現する技術などの開発を実施。その後、2回目として車載向けチップレットSoCの試作を実施。最終的には2028年度をめどに車載システムアーキテクチャの要件定義書の完成、チップレットSoC要件に基づく設計ツール・環境開発の整備、チップレットSoCそのものの製品レベル検証を終えることを計画するとしている。
具体的なイメージとしては、マルチコアのように同一チップレットの並列配置による性能のスケーラブルな変更を可能とする技術の構築を目指す。開発するチップレットのベースとなる規格としてはUCIeに準拠するとしているが、実際のCPUやGPUなどは各自動車メーカーにより、求める性能などが異なることから、ASRAではチップレット技術の仕様策定そのものを中心に行い、その上に搭載される各プロセッサコアなどの素子そのものについては各自動車メーカーの競争領域であるとしている。
また、NEDOの補助金は2024年度に10億円が支給される見通しだが、その支給には2024年度内に実施予定のステージゲートをクリアする必要がある。このNEDOの事業期間は研究開発開始時点から原則5年(60か月)以内とされており、ASRAのロードマップと合致。毎年度ごとにステージゲートが設定され、その成果を踏まえて翌年度の補助金額が決められる模様である。
なお、研究開発体制としては、自動車メーカーのエンジニアが中心となる「車両システムアーキテクチャワーキンググループ」、ティア1メーカーのエンジニアが中心となる「SoCアーキテクチャワーキンググループ」、半導体関連メーカーのエンジニアが中心となる「チップレット技術ワーキンググループ」の3つのワーキンググループ(参画企業各社から2024年度当初は総勢130名が参加する体制)をASRA内部で立ち上げ、外部の企業や機関などとも連携を進め、国際標準化やウェハの試作、パッケージの組み立てなどを進めていくとしている。