パナソニック コネクトは3月29日、2021年に買収したサプライチェーン(供給網)管理システムの米ブルーヨンダーが、同業の米ワンネットワークを8億3900万ドル(約1270億円)で買収すると発表した。2024年7~9月を目途にワンネットワークの全株式を取得する。

  • 米ブルーヨンダーが手掛ける供給網管理システムの画面イメージ

    米ブルーヨンダーが手掛ける供給網管理システムの画面イメージ

ワンネットワークは、原材料からラストマイルの配送まで供給網に関わるさまざまなデータを共有するプラットフォームを手掛ける。ブルーヨンダーの買収としては過去最大の規模になる。

同社はこれまで、2023年10月に物流システム開発の英ドドル、2024年2月に製造業向けの生産・輸送計画システム開発の独フレクシスの買収を発表した(いずれも買収額は非公表)。ブルーヨンダーは、これらの買収を通じて、供給網の川上から川下まで、すべての領域を効率化するシステムの開発につなげる。

同日の記者会見でパナソニック コネクト プレジデント CEO 樋口泰行氏は、「今回の買収により、ブルーヨンダーは圧倒的なゲームチェンジャーになる」と述べた。

  • パナソニック コネクト プレジデント CEO 樋口泰行氏(3月29日、東京都千代田区)

    パナソニック コネクト プレジデント CEO 樋口泰行氏(3月29日、東京都千代田区)

ブルーヨンダーはAI(人工知能)による需要予測などをもとに顧客企業の供給網を見直し、収益改善につなげる事業を展開している。米ウォルマートや英ユニリーバなど3800社の顧客企業があり、1万件の供給網を支援している。23年3月期の売上高は約12億ドル(約1700億円)だった。

一方、2002年に創業したワンネットワークは供給網に関わるデータを管理するシステムを手掛け、米国を中心に15万社以上の顧客企業を抱える。2023年の売上高は約8400万ドルだった。

ブルーヨンダーは両社のシステムを組み合わせ、さらなる供給網の効率化をめざす。具体的には、生成AIといった最新技術を活用して顧客が注文・計画フェーズから実行フェーズに即座に移行できるような環境を構築する。注文入力から取引を開始するまでのタイムラグ短縮につなげる。

ブルーヨンダー CEOのダンカン・アンゴーブ氏は、今回の発表に関して「顧客の需要に応えるため買収だ。供給網の在り方を再構築し、不確実性と混乱をチャンスに変え、ブルーヨンダーの成長につなげていく」と述べた。

  • 米ブルーヨンダー CEO ダンカン・アンゴーブ氏

    米ブルーヨンダー CEO ダンカン・アンゴーブ氏

2024年4月からトラック運転手の時間外労働に年間960時間の上限が課せられる。1カ月あたり平均80時間の上限で、現行の残業上限から19時間短縮される計算。これは東京から大阪間の往復輸送時間に相当する。野村総合研究所の推計によると、2025年に全国の荷物の28%、2030年には35%を運べなくなる可能性があるという。物流業界は作業の効率化などが急がれる。

パナソニック コネクトは3月8日、AI技術や最先端のロボットなどを活用して、トラックの荷待ち時間を半減する新技術を発表。AIがロボットアームや自動倉庫、人による作業などのタスクを最適化し、倉庫内の一連の作業における無駄を省く。

2024年度内の提供開始を目指し、出荷頻度が高く商品の入れ替わりが激しい食品業界などを中心に展開していく方針。将来的には、ブルーヨンダーの需要予測AIと組み合わせ、予想される需要量に応じてトラックの手配台数を最適化していく考えだ。

  • パナソニック コネクトはトラックの荷待ち時間を半減する新技術を開発した

    パナソニック コネクトはトラックの荷待ち時間を半減する新技術を開発した