村田製作所会長の村田恒夫氏が6月下旬の株主総会を経て、相談役に退くことになった。村田氏は創業者で故・村田昭氏の子息。同社から、創業家の代表権者も、取締役もいなくなるのは初めてのことだ。
なお、専務の岩坪浩氏が副社長に、常務の南出雅範氏が専務に、それぞれ昇格し、社長の中島規巨(のりお)氏を含む3名が代表権者となる。
07年に社長に就任した村田氏は、技術革新を摘み重ね、既存事業に近い分野から徐々に新たな分野を開拓していく〝にじみ出し〟と称される手法で成長。スマートフォンやパソコンなどに搭載する積層セラミックコンデンサーで、同社を世界的な企業に押し上げた。07年3月期に5668億円だった売上高は23年3月期に1兆6867億円、営業利益は1133億円から2978億円まで拡大した。
ただ、今期(24年3月期)は2期連続で減収減益の見通し。これまで成長のけん引役だったスマホ向けの電子部品が中国経済減速の影響を受けた。このため、現在、同社はスマホ向けに依存し過ぎない体制の構築に向け、車載向けセンサーなどの開拓を急いでいる。
同じ京都企業では、京セラ創業者の稲盛和夫氏が22年に死去。オムロンは23年から立石文雄氏が名誉顧問となり、創業家出身の取締役が初めて不在に。ニデック(旧日本電産)は今年4月から創業者の永守重信氏が代表権(新たな役職は代表取締役グローバルグループ代表)を持ちつつも、会長を退き、徐々に権限を譲ろうとしている。
村田製作所を含めた京都企業の強さは「創業家が経営をグリップし、即断即決の経営判断ができることが強み」(電機業界幹部)とされる。その創業家も徐々に代替わりしつつある中で、これまでのような成長を果たすことはできるか。