ダイアナ、「超商品紹介動画」でCVR向上 ECの返品率低下にも効果

婦人靴やハンドバッグの企画・販売を行うダイアナは2022年春から、ECサイトにおける動画配信に注力している。「超商品紹介動画」として配信する動画は、靴の素材や見た目から、履き心地、利用シーン、コーディネートまで詳しく紹介している。その「超商品紹介動画」を閲覧したユーザーのコンバージョン率(CVR)は、閲覧していないユーザーの数倍に跳ね上がる。動画は返品率の低下にもつながっており、確かな手ごたえを感じているという。ダイアナのEC強化の変遷や、動画活用のこだわりについて、デジタルマーケティング部 主任 秋本みのり氏、林田望氏、プロモーション企画部 ウェブプロモーション担当 鈴木歩美氏、井口真央氏に聞いた。

<コロナ機にECサイトのコンテンツ拡充>

――ダイアナの取扱商品や販売チャネルは?

秋本:女性用の靴やバッグを中心に販売しています。主なターゲットは働く女性です。すごくカジュアルな洋服に合わせるというよりは、きれい目の洋服に合わせる靴を取り扱っています。フェミニンな装いや結婚式などハレの日にはいていただけるようなアイテムも多く取りそろえています。

実店舗は80店舗以上あり、オンラインでは自社ECサイトに加えて、ECモールでも販売しています。出店しているECモールは、「DIANA」ブランドでは「iLumine」「Amazon」、「アルテミス」や「タラントン」といったブランドでは「楽天ファッション」「ZOZOTOWN」「マガシーク」「ロコンド」などです。越境EC向けのサイトも運営しています。

▲デジタルマーケティング部 主任 秋本みのり氏

――EC事業はどのように強化していったのですか?

秋本:コロナ前のECサイトの商品情報はシンプルでした。商品画像と最低限の商品説明文が載っているようなイメージでした。

コロナ禍を経て、コンテンツを強化していきました。まずは商品の魅力が伝わるような商品説明文を作成していきました。商品開発部門と連携して商品のこだわりを詳しく紹介しています。

▲商品説明などを拡充

その後、画像の掲載点数を増やし、スタッフがSNSにアップしているようなリアルなコーディネート画像を入れるようになりました。お客さまに着用のシーンを想像していただけるように力を入れています。

その他にも、レビューの機能も追加し、お客さまやスタッフのレビューを載せられるようにしました。

▲顧客やスタッフのレビューを追加

林田:コロナが1つの転機になったと思います。コロナ前は、店舗は店舗でできること、ECはECでできることに取り組んでおり、そこまで連携が進んでおりませんでした。

コロナに入り、お客さまが店舗に行けなくなりましたが、ECサイトで商品を購入するときも、店舗と同様の体験を求めていると思います。

店舗に負けない顧客体験をECで実現させるためにどうしたらいいか、を考えたときに店舗のスタッフがお客さまに商品を紹介するように、ECサイトで商品に対してコメントを付けたり、店頭で接客しているように動画で説明したりするようになりました。

▲デジタルマーケティング部 林田望氏

<2022年春から動画配信を開始>

――動画を配信し始めたのはいつぐらいですか?

秋本:2022年春ごろにECサイトでの動画配信を開始しました。コロナ禍にECサイトの強化策を模索する中で、動画活用の取り組みなどの情報を収集し、当社でも取り組むことにしました。

▲ECサイトのトップページの目立つ位置で動画コンテンツを紹介

――動画配信のための体制はどのように整えたのですか?

鈴木:動画撮影の専用スタジオを作り、制作環境を整えました。徐々に体制を作り、現在は3~4人で制作しています。

秋本:動画をECサイトで配信したり、まとめて管理するためにビジュアルマーケティングプラットフォーム「visumo」を導入しました。

――数ある配信ツールの中で「visumo」を選んだ理由は?

秋本:当初、動画を導入する際に「ライブコマース」をやるか、動画を収録して見せていくかを検討しました。その結果、じっくりこだわって動画を作り、お客さまにしっかり見ていただき、商品購入の判断材料にしてもらいたいと考え、撮影した商品説明動画をECサイト内で配信することを決めました。

動画の配信スタイルを決め、ツールを検討した際に、最適なプラットフォームが「visumo」だと判断しました。実績が豊富であり、使い勝手がよく、当社のECサイトを構築している「ecbeing」と親和性が高いという点も決め手となりました。

<「超商品紹介動画」が誕生 制作のこだわりは?>

――YouTubeとECサイトに配信する動画の内容は違いますか?

鈴木:YouTubeチャンネル自体は2018年ごろから運営しています。当初は外国人モデルを起用したブランドやシーズンアイテムのビジュアルやコンセプトを伝える動画を中心に配信してきました。

2022年ごろからスタッフが商品を紹介する動画を配信し始めましたが、主にトレンド性の高い商品を中心に紹介しています。

井口:YouTube、インスタグラム、ECサイトで見ている方が気になる商品は異なってきますので、それぞれのチャネルに合わせて、紹介する商品を選定しています。

YouTubeやインスタグラムはトレンド性の高い靴やキャッチ―なデザインの靴が見られやすいですが、ECサイトではすごい派手な靴や履くのに勇気がいるような靴よりもベーシックな靴の方が皆さん気になってくださる傾向にあります。

▲プロモーション企画部 ウェブプロモーション担当 井口真央氏

鈴木:ECサイトで配信する動画については、お客さまが履いたところを想像できるように、靴をアップで見せたり、ディテールを詳しく紹介したりしています。

私たちの間では、この動画を「超商品紹介動画」と呼んでいます。

▲ECサイト上で商品を詳しく紹介する動画を配信

――「超商品紹介動画」はどのように制作していますか?

鈴木:動画は1本当たり10分くらいの長さで制作しています。月によって本数は変わってきますが、多くて20本くらい配信しています。毎週、数本の動画を配信できるようにスケジュールを組んでいます。

井口:内容にもこだわっていて、どのような順番で説明したらお客さまに伝わりやすいか、組み立てを考えて制作しています。

まず商品のサイズ感やつま先の形、ヒールの高さ、特徴的な素材を使っていたら素材については、必ず紹介するようにしています。

▲商品のデザインや素材などを丁寧に解説

鈴木:例えばラメの生地でもラメが大きい場合と小さい場合でどう見え方が違うのか、なぜこの靴にこの大きさのラメがついているのか。履いた時に感じるサイズ感やヒールの高さの見え方はどうか、といったところまで詳しく紹介しています。

実際に商品を見て、触ってどう感じるかを動画制作チームのメンバーで意見を出し合い、そこで出てきた内容をトークに落とし込んだりしています。開発部署の担当者に話を聞いたりすることもあります。

最初は商品をアップで紹介し、次に足元が映るようにして履いている姿を見せ、最後に全身のコーディネートも見せる形で撮影しています。

▲全身のコーディネートも紹介

井口:撮影の際は、商品の細部まで見せたいと考えています。照明の当たり方でも見え方が変わってきますので、照明の当たり方や画角には注意して撮影するようにしています。

撮影して納得がいかない場合は、撮り直すこともあります。

――ECサイトの動画はチャプターごとに頭出しできるようにしているのですね?

鈴木:動画では、お店で接客している際にお客さまから「こういう質問が多そうだな」という、サイズ感や履き心地など詳しく紹介しています。さらに商品のこだわりポイントなどもお伝えしています。

お客さまによって、動画で確認したいことは変わってくると思いますので、知りたい項目やこだわりポイントをチャプターに分け、「visumo」のタイムスタンプ機能を活用して、チャプターごとにすぐ閲覧できるようにしています。

▲チャプターごとに頭出しができる

例えばエナメルのパンプスをお探しのお客さまは、1つの商品だけを見るのではなく、さまざまなエナメルのパンプスを確認されると思います。そういったお客さまは、それぞれのエナメルのパンプスの動画で、エナメルの解説部分だけをすぐに確認することができます。

各動画のチャプター名を統一しており、気になる部分を探しやすくしています。

▲プロモーション企画部 ウェブプロモーション担当 鈴木歩美氏

<多くの顧客から「動画を見た」の声>

――ECサイトの動画を見た顧客からの反応はありますか?

林田:ECサイトを閲覧しているお客さまからのお問い合わせの際に「動画を見たのですが・・」「動画を参考にしました」と言っていただけることが増えています。動画ということで静止画よりも商品について分かりやすく伝わっているのだと感じています。

秋本:「お客様相談室」に問い合わせいただく際に動画のスクリーンショットを貼り付けて、「この靴のサイズはありますか?」などお問い合わせいただくことも増えています。多くのお客さまに見ていただけているのだなという実感があります。

――ECサイトの動画配信の成果はいかがですか?

秋本:ECサイトの動画を見た方の購入率は、私たちが当初、予測していたものを遥かに上回る数値となっています。

林田:動画を見た方のコンバージョン率(CVR)は、見ていない方よりも数倍高いという結果が出ています。もしECサイトで動画配信をしていなかったら、今ごろどうなっていたかと思うとゾッとするほどです。

秋本:動画を見て商品を購入していただいた方は、動画を見ていない方に比べて返品率も低くなっています。

返品率が下がることで、顧客満足度が上がるだけではなく、当社側の返品商品の受け付け、傷・汚れの検品などの手間も減らすこともできています。

――「visumo」の動画配信以外の機能も活用していますね。

秋本:「visumo」の動画配信機能「visumo video」を導入した後に、インスタグラムとのコンテンツの連携を強化するため、2023年9月下旬から「visumo social」を導入しました。

インスタグラムを見た方がECサイトに訪れた際に、連動したコンテンツがあることで、お客さまは自然な流れでECサイトのお買い物を楽しんでいただけると思います。

▲インスタグラムと連動したコンテンツをECサイトにも掲載

以前はインスタグラムに掲載したコンテンツを手動でECサイトに掲載していましたが、「visumo social」を導入することで、その手間を削減し、自動的にインスタグラムのコンテンツがECサイトに掲載される仕組みを構築できました。

――今後、ECサイトにおいてさらに強化したい点はありますか?

林田:ECサイト上でAIを活用した接客サービスを提供できたらいいなと考えています。現在は私たちがお客さまの問い合わせ対応を行っていますが、すぐにお答えできないときがあります。

ECサイトは夜中に利用するお客さまも多くいらっしゃいます。AIによるチャット接客ができれば、お客さまがちょっとしたことを聞きたいときに、24時間すぐに対応できます。

秋本:動画を活用して店頭の接客の一部をECサイトでも再現できるようになったと思います。AIを活用することで、さらに店頭に近い接客サービスをECサイトでも提供できるようになればという思いがあります。

店頭のようなワン・トゥ・ワンの接客をECで実現しようと思うと、人力では難しい面があります。実店舗の接客の経験・ノウハウがある当社だからこそ、テクノロジーを活用し、ECサイトでも、よりお客さまに寄り添ったサービスを提供していきたいと考えています。

■DIANA通販サイト「dianashoes.com」

https://www.dianashoes.com/shop/

■ビジュアルマーケティングプラットフォーム「visumo」

https://visumo.asia/