国立成育医療研究センター(NCCHD)は3月27日、「子供の健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」の参加者のうちの約6万5000人のデータから、子供の食物アレルギーと親の育児ストレスの関連性について分析した結果、食物アレルギーの子供を持つ親は、育児ストレススコアが有意に高くなることが明らかになったと発表した。
また、種類別の調査では鶏卵アレルギーについても同様の傾向が見られた一方で、牛乳、小麦、ナッツアレルギーでは明確な関係性は認められなかったことも併せて発表された。
同成果は、NCCHD エコチル調査研究部の大矢幸弘代表(NCCHD アレルギーセンター センター長兼任)、同・山本貴和子チームリーダー(NCCHD アレルギーセンター 行動機能評価支援室室長/総合アレルギー科兼任)らの研究チームによるもの。詳細は、欧州アレルギー臨床免疫学会が刊行するアレルギーおよび免疫学の全般を扱う学術誌「Allergy」に掲載された。
エコチル調査とは、環境省が2011年より実施している、日本中で10万組の子供たちとその両親が参加している大規模な疫学調査(エコチルとは、「エコロジー」と「チルドレン」を組み合わせた造語)。子供が母親のお腹にいる時から13歳になるまで、定期的に健康状態を確認し、環境要因が子供たちの成長・発達にどのような影響を与えるのかを明らかにし、子供たちが健やかに成長できる環境、安心して子育てができる環境の実現を目指すことが目的とされている。
食物アレルギーは1つ間違うと、命に関わる場合もあるため、常に注意を要する必要があり、これまでの研究から、食物アレルギーがある子供とその家族について、食物アレルギーが不安や生活の質の低下と関連するという報告が多くされていたという。しかし、子供の食物アレルギーの種類や数による親の育児ストレスに関する報告はなかったとする。そこで研究チームは今回、エコチル調査において、19の質問に答えることで簡単で短時間に親の育児ストレスを測定できるツール「Parenting Stress Index-Short Form」を用いて、子供の食物アレルギーと親の育児ストレスについて検討することにしたという。
2011年1月から2014年3月までにエコチル調査に登録された、北海道から沖縄まで日本全国15の地域の子供6万5805人とその親が対象とされ、そのうち2歳時点で7.2%の子供が食物アレルギーの診断を受けていることが確認された。そして分析の結果、子供に食物アレルギーの診断があると、親の育児ストレススコアが有意に高くなることが判明したとする。
また、子供の食物アレルギーの種類別による分析では、鶏卵アレルギーについて同様の傾向が見られたとした。ただし、牛乳、小麦、ナッツアレルギーでは明確な関係性は認められなかったという。
今回の研究により、子供が食物アレルギーと診断されることが、親の育児ストレスを有意に増加させることが示され、中でも子供の鶏卵アレルギーが親の育児ストレスを増加させることが示された。鶏卵アレルギーは日本では一般的な食物アレルギーだが、その一方で鶏卵は数多くの加工食品や菓子類に使用されており、親は常に成分を意識する必要があることから、ほかの食品よりもストレスが大きくなる可能性が考えられると研究チームでは説明している。
なお研究チームは今回の結果に対し、重症度を考慮した分析ではないことから、今後は重症度を考慮したさらなる調査も必要と考えているとしているほか、医療提供者は、食物アレルギーを持つ子供の親のストレスに注意を払いながら日常の診療を行う必要があるとしている。