セールスフォース・ジャパンは3月28日、都内でメディア・アナリスト向けの説明会を行い、Slack AIの機能と国内提供を4月17日から開始すると発表した。また、説明会ではグローバルにおけるデスクワーカーを対象にAIに関する最新の調査結果も発表し、業務におけるAI利用のトレンドを紹介した。
日本語で「Slack AI」の利用が可能に
冒頭、セールスフォース・ジャパン 製品統括本部 プロダクトマネジメント&マーケティング本部 シニアディレクターの山瀬浩明氏は「自動化の仕組みを簡単に作れる。これでけではなく、カスタマーアプリケーションも作成でき、100万を超える開発者がアプリケーションを構築しており、昨年にAIを使ったアプリ数は1万3000に達した。Slackを導入した94%のお客さまはROI(投資利益率)を実感している。AIもバンドルされているためAIの能力も感じられる」と述べた。
すでに、Slack AIは今年2月に米国と英国で英語による提供を開始しており、日本語での利用が可能になった。Slack AIの特徴は「検索の回答」「チャンネルの要約」「スレッドの要約」の3つ。
検索の回答では、ユーザーが会話形式で質問を投稿すると関連する会話データにもとづいて、Slack内のナレッジから明確で簡潔な回答を得られる。
また、チャンネルの要約はトピック間の移動も含めて、あらゆるチャンネルで重要なハイライトを抽出できる。
スレッドの要約ではワンクリックでスレッドの会話を迅速に把握して最新の状況に追い付くことを可能としている。
セキュリティに対しては信頼性と安全性を設計段階から確保しており、LLM(大規模言語モデル)はユーザーがすでにアクセス可能なデータにのみアクセスし、プロンプトへの回答に必要なデータにしかアクセスしないという。
さらに、データはSlackのLLMのトレーニングには使用されないことに加え、データはSlack内にとどまり、サードパーティのLLMで外部共有または処理されることあないとのことだ。
山瀬氏は「すでに、パイロットカスタマーは1人あたり週あたり97分の時間削減につながっている。企業内にはまだまだ自動化できるマニュアル業務が多数あるため、Slack AIを活用して生産性向上の余地はあり、今後も新機能の開発に取り組んでいく」と力を込めていた。
グローバルでAIの利用率は高まるも日本は停滞傾向に
続いて、Slack ユーザーインターフェース/ユーザーエクスペリエンス担当SVPのクリスティーナ・ジャンザー氏がリモートで参加し、AIに関するグローバルの調査結果を解説。
調査は米国、オーストラリア、フランス、ドイツ、日本、英国を含む1万281人のデスクワーカーを対象に、2024年1月10日~同29日にかけて実施した。
調査対象者は、フルタイム雇用(週30時間以上勤務)で経営幹部(社長/共同経営者)、上級管理職(執行副社長、上級副社長など)、中間管理職(部長、グループマネージャー、バイスプレジデントなど)、下級管理職(マネージャー、チームリーダーなど)、シニアスタッフ(非管理職)、専門職(アナリスト、グラフィックデザイナーなど)の担当者、あるいはデータの取り扱い、情報の分析、創造的な思考を担う社員となる。
グローバルにおける業務でのAI利用は前四半期から24%増加し、前四半期は5人に1人だったが、4人に1人となっている。しかし、日本では10%減少し、調査した国では最も低い結果となり、5人に1人の利用率となっている。
また、AI利用者の80%は「すでに生産性が向上している」と回答しているが、グローバルの回答者のうち42%が現在のタスクをAIや自動化が肩代わりしてくれることに期待しているという。AIが特に役立つ一般的な業務としては文書作成サポートや要約、ワークフローの自動化、新しいトピックについて学ぶための調査などだ。
一方、31%はどちらとも言えない、27%は不安だと回答しているように、デスクワーカーの受け止め方が複雑になっていることが浮き彫りになった。このような中で、日本はAIや自動化に期待を寄せているデスクワーカーの割合が53%とグローバルで最も高い結果になった。
AIの活用を促進するためにはガイドラインを示す必要がある
加えて、経営層はグローバルで81%、日本で87%がAIツールの導入に一定の緊急性を感じており、生産性の向上やデータにもとづく意思決定、製品・サービスのイノベーション、コスト削減に期待している。他方で、データセキュリティプライバシーやAIの信頼性と正確性、従業員の知識不足とスキル格差、顧客の信頼と受け入れを懸念しているという。
さらに、AIの利用に関するガイドラインを発行している企業のデスクワーカーは、そうでない企業のデスクワーカーと比較して、AIツールの利用経験が6倍近く高いことが示されている。日本のデスクワーカーのうち、49%(グローバルは43%)がAI利用に関するガイダンスを受けていないと回答し、これはグローバルで最も高い割合だという。
デスクワーカーは自分の時間の41%、週2日の労働時間を「価値が低く反復的、または中核的な業務への貢献度が低い」タスクに費やしていると考えており、ここからAIや自動化ツールの導入で「仕事のための仕事」から解放され、より価値の高い活動に注力できる可能性の高さが示唆されているとのこと。
また、グローバルでは43%、日本では49%のデスクワーカーが業務でのAIツールの活用方法についてガイダンスを受けておらず、日本の数値は最も高くなっている。
AIについて明確なガイドラインがある会社のデスクワーカーは、6倍の確率でAIツールを試したことがある反面、世界中のデスクワーカーの70%はAIツールの利用に関わる倫理や安全性についてトレーニングを受けておらず、日本では大半が業務でのAI活用について利用ポリシーが適用されてないという。
こうした調査結果を受け、ジャンザー氏は企業におけるAIの活用について「ガイドラインの明確化」「実験を受け入れる」「相互学習やチーム学習の推進」の3つのポイントで提言している。
同氏は「AIの経験をチームに共有すれば、周りの人たちも学ぶことができる。そのため、これら3つの側面で活用を進めてもらいたいと考えている」と述べていた。