岩手大学、九州大学、アルプスアルパイン、中嶋製作所、NTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)は3月28日、岩手県九戸郡洋野町にて1月15日より「鶏舎環境モニタリングコントロールシステムの実証型研究開発」を開始したことを明らかにした。
なお、この実証事業は情報通信研究機構(NICT)の令和5年度委託研究 課題番号233「データ利活用等のデジタル化の推進による社会課題解決のための実証型研究開発(第2回)」の採択をうけて実施するものとのことだ。
実証の内容
今回の実証は養鶏業における生産性の向上を目的として、鶏舎内の温度や湿度、二酸化炭素などの環境データをパラメータとして、独自の数理モデルとAI(Artificial Intelligence:人工知能)を組み込んだ鶏の突然死数予測システムについて検証する。
また、養鶏場における労働環境の改善を目的とし、鶏舎内で使用可能な高精度アンモニアセンサーと粉塵センサーの技術開発にも取り組む。また、鶏舎内の臭気成分濃度分布評価技術を確立するとともに、高効率誘導性ナノ秒パルス電源を用いたプラズマ生成により悪臭物質を分解する高効率ガス処理集塵装置を開発し鶏舎内の環境改善を試みる。
通信状況が不安定な中山間地域における安定した通信環境の実現に向けては、現在通信エリア外となっている養鶏場内にマルチホップ機能を有したWi-Fiを設置し、養鶏場内の無線通信エリア化を実施。一次産業分野での環境に耐えうる特異的な機能として、通信機器における広い動作保証温度や鶏舎内利用を想定した防塵機能、屋外利用を想定した防水機能についても検証する。
実証事件の背景
岩手県は国内でも著名な養鶏の産地の一つであり、主力産業として地域の仕事や暮らしを支えるとともに日本の食糧安全保障の一翼を担っている。その一方で、畜産業が抱える課題として、過酷な労働環境や少子高齢化による就労人口減少が持続的な発展を妨げている。
これに対し、鶏舎内環境データをもとに畜産技術と情報通信、数理モデル、AI、プラズマ科学を融合し、生産性の向上や就労環境の改善などを図り、通信条件が不安定な地域においても使用可能な鶏舎環境モニタリングコントロールシステムの開発を目指す。