日産とホンダがEVで協業検討開始 米中の新興勢への危機感が引き金

自動車業界で再編の予兆が起こり始めている。日産自動車とホンダが電気自動車(EV)分野で提携する検討を始めた。駆動源の「モーター」や電力変換装置「インバーター」、回転を伝える「ギア」を一体化した「イーアクスル」といった部品の共通化などを視野に入れる。

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「規模拡大が欠かせない。(ガソリン車で積み上げてきた)これまでの強みでは、これからは戦えない」─。ホンダ社長の三部敏宏氏はこう強調し、日産自動車社長兼CEOの内田誠氏も「米中の新興勢力メーカーなどが参入し、市場の変化するスピードが変わった」と提携検討の理由をこのように述べる。

 両首脳を駆り立てるのは電動化とソフト化という「クルマのものづくりを根本的に覆してしまう産業界の変化」(関係者)に対する危機感だ。足元ではEV化からの揺り戻しが起こってハイブリッド車が好調ではあるが、中長期的な視点では「EV化の流れは止まらない」(別の首脳)。

 実際、米テスラや中国のBYDをはじめ、欧米メーカーなどはEV向け電池の自前工場などに巨額の資金を投じている。その端境期に当たるのが2030年だ。三部氏も「30年にトップランナーでいるためには、動くのならば今だ」と話す。

 既に日系メーカーはEV化で出遅れている。23年のEVの世界販売台数は日産が14万台、ホンダが1.9万台に過ぎない。対するテスラは180万台で、BYDも157万台に達する。その両社も23年10―12月(第4四半期)の販売台数でBYDがテスラを初めて抜くという逆転劇まで起こり始めている。

 EVの競争力を高めるためには、利益率の低下につながるバッテリーのコストをいかに下げられるかが1つのポイントだ。今は年間販売台数が約410万台(23年度見通し)のホンダと約355万台の日産の主流はガソリン車だが、合計約760万台の規模感をEVの共通部品などに反映できればコスト削減効果も出てきやすくなり、「軽自動車のEVが出てきたら脅威となる」(軽自動車メーカー関係者)との声もある。

 今のところ、協業検討を開始した初期レベルで具体的な方策は打ち出されていない。また、資本提携などに進む可能性も「現時点では一切ない」(三部氏)。〝生煮え〟でスタートした日本の自動車メーカーの2位・3位企業の提携劇が世界の潮流を変えることができるか。両社の本気度が試される。