富士通は3月26日、AUV(Autonomous Underwater Vehicle:自律型無人潜水機)を用いて海中の生物や構造物の3次元形状データを取得する技術を開発したことを明らかにした。この技術は、海洋の状態をデジタル空間に再現して、海洋を構成する環境の変化などをシミュレーション可能とする海洋デジタルツインの研究開発の成果だという。

  • サステナビリティ・トランスフォーメーションを実現する海洋デジタルツイン構想

    サステナビリティ・トランスフォーメーションを実現する海洋デジタルツイン構想

開発技術の概要

同社が今回開発した技術は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)を活用して画像を鮮明化し、濁った海中でも対象物を識別して形状を計測できる画像鮮明化AI技術と、波や潮流の中でもリアルタイムに自律型無人潜水機からの安定計測を可能にする海中3次元計測技術から構成される。

この技術により、カーボンニュートラルや生物多様性の保全に向けた海洋調査の対象となる生物や構造物の状況を可視化し、体積などを推定可能となった。海上技術安全研究所と共に沖縄県石垣島近海において実施した実証実験では、サンゴ礁の精密な3次元形状データの取得に成功し技術の有効性が確認されたとのことだ。

画像鮮明化AI技術

濁った海中での撮影により色が劣化して輪郭がぼけた画像でも生物や構造物を高分解能で3次元化するために、同社は海中の被写体に最適化した深層学習を行い画像鮮明化AI技術を開発。この技術は濁り除去と輪郭の復元を実現する2つのAIで構成され、被写体本来の色を復元してぼけた輪郭を改善した画像を生成した上で3次元化する。3次元化処理と被写体認識のエラーを防止し、物体ごとに形状計測が可能となった。

  • 画像鮮明化AI技術の使用例

    画像鮮明化AI技術の使用例

海中3次元計測技術

海中でリアルタイムに3次元計測するために、体操の判定を支援する「Judging Support System」「Judging Support System」で培った、短周期のレーザー発光と高速走査による高速サンプリング技術を採用。さらに、3つのレーザー波長の中から海況によって計測に適した波長を選択できる水中LiDAR(Light Detection And Ranging)も導入した。

これにより、移動している自律型無人潜水機から3次元計測ができるだけでなく、物体の動きを追従する技術を開発し、動いている物体も計測可能になると期待されるようだ。

  • 水中LiDARによる3次元計測

    水中LiDARによる3次元計測