大林組とNTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)は3月22日、屋内建設現場における施工管理の効率化を目指し、ドローンを活用した完全無人巡回による工事進捗管理の実証実験を3カ月間実施した結果を明らかにした。
今回の実証では、屋内建設現場の巡回と記録に要する時間を従来の1時間から10分に短縮でき、日々変化する状況下においても安全に自動巡回ができることを確認したとのことだ。
実証の内容
実証は東京都港区の大規模建設現場で実施した。この現場では地上と地下の工事を並行して実施しており、地下空間では重機による掘削作業を進めていたことから、職員の立ち入りが困難で進捗管理に時間を要していたという。
そこで、Skydio製の自律飛行型ドローン「Skydio 2+」と専用のドローンポートシステム「Skydio Dock and Remote Ops.」を用いて、操縦者を不要として進捗管理の効率化を図った。実証期間は2023年11月から約3カ月にわたり、平日の21時から約10分間の飛行を合計56回実施している。
実証に用いたドローン「Skydio 2+」
今回の実証で使用したSkydio 2+は、機体の上下に搭載したカメラで取得した映像から周囲の三次元環境と自己位置を推定可能。工事の進捗により周囲の状況が変化した場合でも、障害物を回避して安全な自動巡回が可能だという。また、ドローンポートのSkydio Dock and Remote Ops.は、事前の飛行ルートやスケジュールをクラウドサービス「Skydio Cloud」上で設定する機能を備える。
自動離発着や自動給電機能などにも対応するため、特に大規模現場において課題となる、現場と現場事務所間の往来に要する手間と時間が削減できるとのことだ。ドローン映像をリアルタイムに配信可能であり、遠隔地から現場状況を確認できるようになるため、施工管理者や普段現場に立ち入ることのない発注者も安全に工事進捗を確認可能だ。
実証の背景
建設業界においては工事写真の撮影や測量を目的としたドローンの利用が進んでいるが、屋外での使用例が多くGNSS(Global Navigation Satellite System:衛星測位システム)が取得できない屋内での活用は進んでいない。
これに対し大林組とNTT Comの両社は2021年より、現場巡回をはじめとする施工管理業務の効率化を図るため、屋内建設現場でも安全に自動巡回できるドローンの活用に向けた運用検証を共同で実施してきた。
従来のドローン利用においては、離着陸やバッテリー交換のために操縦者が現場にいる必要があったが、今回の実証では自動給電可能なドローンポートと専用のドローンポートシステムを導入することでドローンのみの完全無人巡回を実現している。