期待された豊田章男氏は選任されず
経団連(十倉雅和会長)の新たな布陣が固まった。3月11日の正副会長会議で新たに副会長に就く4氏が内定。5月の定時総会を経て正式に就任する。
今回就任が内定したのはソニーグループ会長CEO(最高経営責任者)の吉田憲一郎氏、三井住友銀行会長の髙島誠氏、日本郵船会長の長澤仁志氏、住友商事社長の兵頭誠之氏。財閥系のバランスも考慮された人選となった。
中でも注目は、ソニーグループの吉田氏。ソニーでは創業者の1人である盛田昭夫氏、出井伸之氏も副会長を務めた経験があるが、吉田氏の就任は約20年ぶりのこと。特に盛田氏は1993年11月、経団連会長への就任が内定した翌日にテニス中に脳内出血で倒れ、就任が実現しなかったという経緯がある。
吉田氏は社長として、ゲームやアニメ・映画、半導体、金融など幅広い事業領域で、ソニーを高収益企業に押し上げた。さらに、ハードの売り切りではなく、ソフトなどで継続的に利益を上げる「リカーリングビジネス」という新たなビジネスモデルを確立したことでも知られる。
もう1つ、以前から副会長への就任が期待されていたトヨタ自動車会長の豊田章男氏は選任されなかった。同氏は22年に新設された「モビリティ委員会」の共同委員長に就任し、経団連の活動に関わるようになったこともあり待望論も出ていた。
ただ、グループのダイハツ工業や豊田自動織機で不正問題が発覚し、豊田氏はグループを代表する立場で立て直しに関与する必要もある。そうした事情も考慮しての経団連サイドの判断。
十倉氏の任期は25年までで、まさに総仕上げに入っている。これまで賃上げや国としてのエネルギー確保、中国など諸外国との対話、さらには社会保障制度などについて積極的に提言、発言を進めてきた。
今後は次期会長選びが本格化することになるが「製造業・副会長経験者・国際経験」といった諸条件から、足元では日立製作所会長の東原敏昭氏、日本製鉄会長の橋本英二氏、NTT会長の澤田純氏らの名が取り沙汰される。転換期にある日本を牽引するリーダーは誰になるのか。