アクアマリンふくしま(ふくしま海洋科学館)と東京大学(東大)の両者は3月19日、2021年3月8日に実施された福島県水産海洋研究センターの調査指導船「いわき丸」のトロール調査にて採集された1個体のスナヒトデ属の未記載種が、新種として公表されたことを共同で発表した。
同成果は、東大大学院 理学系研究科附属 臨海実験所 学術専門職員の小林格博士、同・大学大学院 理学系研究科の山本真正大学院生(研究当時)、国立科学博物館の藤田敏彦博士らの共同研究チームによるもの。詳細は、英国海洋生物学協会が刊行する海洋生物学に関する全般を扱う学術誌「Journal of the Marine Biological Association of the United Kingdom」に掲載された。
スナヒトデ属のヒトデ(棘皮動物門ヒトデ綱スナヒトデ目スナヒトデ科)は、世界各地の熱帯~温帯の砂底に生息し、貝類などを捕食する獰猛な種が多いことが知られている。日本近海では、北海道南部以南の浅い海の砂泥底に生息している。普段は砂の中に潜って姿を隠しているが、エサの臭いを嗅ぎ取ると姿を現すという。世界では48種が確認されており、そのうち日本国内で確認されているのは6種。今回発見された新種のヒトデ「サザレスナヒトデ」(学名:Luidia iwakiensis)は、福島県いわき市の沖合にて、水深およそ175mの地点から、トロール調査によって採取された。
サザレスナヒトデの腕は5本で、近縁種の「サガミスナヒトデ」(L. sagamina)とは異なり、体表に多数のはさみのような棘の「叉棘」(さきょく)が不均一に散りばめられているのが特徴。また、その叉棘が小石状に丸みを帯びており、さざれ石(石灰質角礫岩)のように見えることが和名の由来となっている。また、いわき沖において発見されたことにちなみ、学名の種小名には「iwakiensis」と命名された。
上述したようにスナヒトデ属のヒトデは獰猛な種も多いが、サザレスナヒトデの生態についてはまだよくわかっておらず、今後の研究が待たれるとしている。なお、スナヒトデ属の新種が日本から発見されるのは104年ぶりのことだという。そして4月からは、アクアマリンふくしまの「飼育員の研究レポート」でも情報を掲載していく予定としている(1体しか発見されていないためと予想されるが、生体および標本の展示は現在は行われていない)。