新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)とソフトバンクは3月21日、NEDOの委託事業「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」において、ソフトバンクが、産業技術総合研究所(産総研)と共同でポスト5G時代に必要なMEC/クラウド環境を用いた分散処理システムで、遅延制約を満たすと同時にスループットを最大化するためのアプリケーションを構成するコンポーネントの最適配置を動的に行うシステムを開発したことを発表した。
同事業のユースケースをV2Xとし、遅延制約の目標を25ms以下で検証を行った結果、14.8msでの処理を達成し、エッジのみで処理した場合に比べて2倍の実効スループットを達成したという。
ソフトバンクは、NEDOの「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」において、2020年10月から2023年10月まで、産総研と共同で、ポスト5Gに対応しクラウドやMECなどのネットワーク資源が協調してデータ処理を行うことで、処理能力のスケーラブルな拡張を可能にし、低遅延性を確保しながら大規模なデータ処理を実現するシステムの開発に取り組んだ。
従来のIoTデバイスとクラウドのみを想定した分散システムには存在しない、MECも含めたネットワーク環境における分散処理において、今回開発した独自配置アルゴリズムを通じて計算資源の管理手法を明らかにするとともに、MECの有用性を定量的に検証しMECを適切に利用することで、従来よりも1桁小さい遅延処理を目指した。
今回、自動的に遅延制約を満たしつつ大規模な処理に対応するアプリケーションのコンポーネントを最適に配置するためのシステムを開発した。5Gシステムからのネットワークの情報とMECやクラウドの計算資源に関する情報をリアルタイムに監視・取得し、その状況に応じた、アプリケーションを構成する複数のコンポーネントの最適配置解を計算し、その結果に基づいてコンポーネントを動的に配置する。
最適配置解の計算については独自のアルゴリズムを開発し、アプリケーションおよび計算機の特性や性能を厳密に計算し、アプリケーションからの遅延要求を満たす中で、最大のスループットを達成するコンポーネントの配置解を導出する。このアルゴリズムを用いたシステムにおいて、ネットワークの状態変化や計算資源の状況に応じて満たすべき遅延制約やスループットを確保しつつ、動的にコンポーネントの配置解を導き出すことが確認されたということだ。
このシステムの特長を生かすため、低遅延・多数同時接続・広域性を必要とするユースケースに鑑み、V2Xによる自動車の衝突回避支援を想定したシミュレーションを実施した。このシミュレーションでは、疑似的なV2Xアプリケーションを開発し、ネットワークの状態や計算資源で疑似的なポスト5G環境を構築した上で、最適配置の有効性を確認した。V2Xに求められる遅延制約を25msと設定し検証した結果、クラウドにのみ配置した時では満たせない25ms以下である14.8msを達成し、ファーエッジのみにコンポーネントを配置した場合に比べ、実効スループットが2倍になることを確認した。
今回開発したシステムのプラットフォームは、オープンなインターフェースとして、5Gデジタルサービスの開発・運用を可能にする環境の提供を想定しているという。今後、5GデバイスやMECを用いた実証実験を通して、自動運転や工場のスマート化などのユースケースに関わる実用化検証を行う予定だという。さらに、NEDOはこの事業をはじめ、ポスト5Gに対応した情報通信システムの中核となる技術の研究開発を推進し、日本のポスト5G情報通信システムの構築・製造基盤強化に貢献していく構えだ。