米バイデン政権は3月20日(現地時間)、商務省と米Intelが、米国における半導体の製造拡大と技術開発を支援するために最大85億ドルの助成を提供する予備的覚書(PMT)に署名したことを発表した。これは米国の半導体製造能力と経済安全保障の強化を目指したCHIPS and Science Act(以下CHIPS法)に基づく4社目の助成金提供発表であり、これまでで最大の支給額になる。
Intelは、アリゾナ州とオハイオ州で複数の最先端のロジック半導体製造施設を建設している。またニューメキシコ州で2つの施設を先端パッケージング施設に近代化させ、オレゴン州において高NA EUVリソグラフィ装置を利用する技術開発施設を拡張するなど最先端技術研究への投資も強化している。米政府は、米国内での製造施設の拡大と近代化を進めるIntelの取り組みを通じた米国への投資額が5年間で1000億ドルを超えると見込んでおり、それにより1万人以上の製造業雇用と2万人近い建設業雇用が創出されると推定している。
地政学的リスクの高まりや新型コロナウイルス感染症によるサプライチェーンの混乱を受け、2022年に米国でCHIPS法が成立し、2024年2月に本格的な実施が始まった。CHIPS法に基づいたこれまでの合意は、英BAE Systems(防衛関連技術:助成金3500万ドル)、米Microchip Technology(マイクロコントローラ/メモリ/アナログICなど:1億6200万ドル)、GlobalFoundries(半導体製造サービス:約15億ドル)となっている。それらに比べて、今回のIntelへの支給額は大きい。
最先端のチップ技術は、AI開発や軍事力構築における重要な要素になっており、Intelが持つIntel 18Aなどのプロセス技術や高度なパッケージング技術とファウンドリ・サービスを組み合わせて、最先端チップの自前供給を確保する計画である。ジーナ・レモンド商務長官は今年2月に先端半導体について、2030年までに米国が世界生産の20%を占めるという目標を打ち出した。CHIPS法には投資を米国内に回帰させる狙いもあり、同法の下で助成金を受ける企業は10年間、中国や他の懸念国での半導体製造の大幅な拡大が制限される。