政府は、残業時間の上限規制によって、トラック運転手が不足する物流業界の「2024年問題」に対応するため、30年度までの物流効率化に関する中長期計画を策定した。
国が定める「標準的運賃」の見直しなどにより、24年度の運転手の賃金について、10%程度の引き上げ実現を目指す。また、倉庫前での荷待ちや積み下ろし作業にかかる時間を、1人当たり年125時間削減する目標(19年度は750時間)も明記した。
標準的運賃は貨物自動車運送事業法に基づくもので、国土交通省が目安として示している。国交省は運転手の処遇を改善するため、平均で8%引き上げる。荷物の積み込み作業をはじめ、運送事業者が十分に受け取れていない料金を適正に収受できるようにする対策も併せて実施し、賃上げ原資の確保を後押しする。
また計画では、19年度時点で38%の積載率について、44%に引き上げることも提示。実現に向けて複数の物流事業者が連携して荷物を積む「共同輸送」を推進する。政府は、運転手の賃上げや荷待ち時間の削減などを含め、計画の達成度を毎年度確認する。
労働基準法改正により、今年4月から運転手の時間外労働の規制が強化され、物流の停滞が懸念される。政府はこのままでは30年度に34%の輸送力が不足すると試算。それでも国交省物流・自動車局の中堅は「計画に基づき、しっかり対策を講じれば、不足分を補うことができる」と意気込む。
もっとも、自民党物流調査会の幹部は「物流の対策は実際にやってみないと分からないことも多い」と指摘。その上で、「計画を作って終わりではなく、PDCA(計画・実行・評価・改善)サイクルを回し続けることが重要だ」とし、検証や改善の継続を怠ってはならないと訴えていた。