NTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)と大和ハウス工業は3月18日、マルチテナント型物流施設「DPL久喜宮代」(埼玉県南埼玉郡宮代町)において実施中のドローンを用いた実証実験の様子を報道陣に公開した。この実証は2023年8月1日に開始したもの。
ドローンを用いた自動巡回点検
近年の物流施設の大型化と建物管理者の人手不足に伴い、施設点検管理の負担が増大しているという。「物流の2024年問題」なども課題となる中で、シャッターやガードポールの損傷による事故や業務停滞は物流問題へと直結しかねない。放火や不審者対策などのセキュリティ強化や、災害発生時の迅速な現場確認のためにも、施設の自動巡回は必要となる。
これに対し両社は、ドローンを用いた自動建物巡回点検の実現を目指す。両社によると、ドローンで点検を行うことで、点検業務の3割程度の負担軽減のほか、点検報告資料の自動作成などが見込めるという。また、情報の蓄積によりAIを用いた点検業務の高度化なども期待できるとのことだ。
実証で使用するドローン機体は「skydio2+」。これまでに4500枚の画像を教師データとしたAIの学習と、ダミーの傷を用いた検知率の測定を完了している。NTT Comで実証を担当する村川幸則氏によると、傷の判定率はおよそ9割前後とのことだ。
現在はスマートシティ向けのデータ利活用基盤であるNTT Comの「SDPF for City」と各クラウド基盤を介したデータ連携について検証する段階。
ドローンを活用した運用モデルの将来像
2023年度には、ドローンを用いた屋内自動飛行制御システムの実用性を検証した。同システムはCAD上で飛行ルートを設定し、ドローン本体に搭載したカメラなどを使用して非GPSでの飛行を実現している。
2024年度以降は、ドローンが撮影した画像から対象物を検知してリアルタイムに傷や破損の有無を検出する画像解析システムの開発を進める予定だ。また、映像管理アプリケーションを構築し、アラートメッセージの発出や過去の履歴確認の機能なども実装を進める予定。
大和ハウス工業の石川一郎氏は「遠隔地や地方の管理物件を一元管理可能な仕組みやBIMとの連携、テナントの施設点検サービスの開発、災害時などの早急な現場確認、AI画像解析技術の庫内物流管理への適用なども視野に入れている。今後は他の施設にも導入を進め、削減したコストはテナント賃料の値下げなどで顧客に還元できるだろう」と、将来の展望を示した。