台湾政府行政院の鄭文燦・副院長が3月18日、台湾の嘉義県にて会見し、増加の一途をたどるAI半導体の需要に対応することを目的に、TSMCが南部科学園区嘉義園区(嘉義県太保市)に同社の先進パッケージング技術「CoWoS」の工場を建設する計画を発表した。
TSMCの計画によると、当面は2棟の製造棟を建設する計画で、第1棟目は2024年5月に着工、2028年からの量産開始を予定しているという。ただし、台湾行政院は、南部科学園区嘉義園区にて、TSMCとの間で6つの製造棟分の用地を提供することですでに合意している模様で、従来計画されていたものよりも2棟増加となり、投資額も合計5000億NTドル(約2兆3600億円)を超す規模になるものとみられると複数の台湾メディアが報じている。
また、嘉義県政府によると、1棟目の建屋完成に伴って新たに3000人の雇用が生まれる見込みだという。現在、TSMCは、自社の先進パッケージング工場が提供する生産能力だけでは顧客の需要に応えられないことから、CoWoSの生産やその最終検査の一部を、パートナーである日月光投資(ASE Technologyホールディングス)などに委託しているとされている。
日本にも先進パッケージング工場の設置を検討か?
このほか、TSMCはCoWoS対応工場を台湾域外の日本に設置することも検討している模様だと海外メディアが報じている。
製造能力そのものの向上のみならず、製造装置や材料メーカーが多く拠点を構える日本で生産することで、より密接なそれらのパートナーとの関係構築も期待されるためとみられるが、その検討は初期段階であり、実際に投資を行うのか否かといった部分を含め、具体的な規模や時期などについては決まっていないという。
日本の経済産業省(経産省)は、これまでにもTSMCの後工程工場の日本への誘致に向けて動いてきたが、TSMC側が日本での工場建設に同意しておらず、その代わりの取り組みとして、つくば市に「TSMCジャパン 3DIC研究開発センター」を2022年に設置し、国内の装置材料メーカー30数社とNDA契約を結んで先進パッケージングの開発を進めている。
すでにTSMCの前工程工場(JASM)は熊本県に誘致することに成功しているが、経済安全保障を考えると、後工程のパッケージ化もなされなければ実際に半導体を利用できないことから不十分との見方もあり、経産省でも水面下で継続して後工程工場の誘致活動を進めている模様である。なお、本件に関してTSMCからは公式なコメントは出ていない。