「企業とその取引先との受発注や契約書、見積書などのやりとりといった非競争分野は皆で〝シェア〟する世の中だ」
斉藤恭彦・信越化学工業社長「塩ビ、半導体関連に加えて、次世代ディスプレイなど新領域を開拓」
1998年の会社設立以来、企業〝間〟をデジタル化・標準化する「BtoB(企業間商取引)プラットフォーム」を展開。当初はフード業界の商談領域からビジネスを開始し、2003年には受発注サービスも始めてEDI(企業間で行われる商業活動)領域にも進出した。そして15年には全業界をターゲットとした請求書事業も開始。
「企業間取引のデジタル化の肝は、その企業の取引先にもシステムを導入してもらうこと。当社の強みは、その取引先も巻き込む〝稼働ノウハウ〟だ」
企業間取引が電子化されれば、導入企業は紙の請求書を送らずに済み、システムへの手入力などの手間も省ける。誤発注も防げるため、「日本全体のデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現に寄与できる」
請求書事業を契機にユーザー数は急速に拡大。ユーザー企業は100万社を突破し、23年度の取引流通総額は44兆円超だ。創業以来、25年連続増収を続けており、24年度の売上高は161億円、26年度には200億円の売上を目標にしている。
コロナ禍を経て業界問わずデジタル化は加速。「D(データ)toD(データ)の時代が来る」と強調する。商談、契約、見積り、受発注、請求書、帳票保管など、企業間で発生する全ての工程がデジタルのまま推移するというものだ。今後は「アナログデータへの変換によるムダが一切なく、完全デジタル化を実現する」ことを目標に置く。
また、フード事業では既存の外食チェーンやホテル、給食に加え、ホテルなどの他業態や地方のDXを推進。同時に、食品卸の受注100%デジタル化や店舗オペレーション管理ツールの拡販も進めていく。「電気や水道のようなインフラとして日本を変えたい」と意気込みを語るのは、銀行員時代に出会った創業者の思いに共感したからだ。
社会人になった娘と買い物に行って過ごす休日が憩いの時間となっている。