富士通とAmazon Web Servicesは3月18日、レガシーシステムのモダナイゼーションの加速に向けてグローバルパートナーシップの拡大に合意し、「Modernization Acceleration Joint Initiative」として4月1日より取り組みを開始すると発表した。

富士通のレガシーシステムのモダナイゼーションに対する姿勢

富士通 執行役員SEVP グローバルテクノロジーソリューション 島津めぐみ氏は、同社がレガシーシステムのモダナイゼーションに注力する背景の一つに、同社が2030年にメインフレームの販売を、2029年にUNIXサーバの販売を終了することを挙げた。

  • 富士通 執行役員SEVP グローバルテクノロジーソリューション 島津めぐみ氏

また、企業はデータドリブン経営に向け、レガシーシステムからデータ利活用の基盤を整備しており、「ビジネスを支えるシステムの最新化に注力する」と、島津氏は述べた。

そして、島津氏は同社のモダナイゼーションに関する新たなコンセプトとして、「Road to 3X」を披露した。このコンセプトには、目的をもってさまざまなデータを一つに束ね、新たな価値を生み出す道を示すという意味が込められており、3つのXとして「DX」「SX」「GX」の実現に向けて伴走する。

  • 富士通のモダナイゼーションの新コンセプト「Road to 3X」

富士通のモダナイゼーションにおける3つの強み

島津氏は、モダナイゼーションにおける同社のアドバンテージとして、「40年以上にわたる基幹システムの構築豊富な経験と実績」「CoE機能によるナレッジ集約」「グローバルスタンダード」を挙げた。

同社はモダナイゼーションナレッジセンターを2022年9月に開設、そのための人員を150人まで増やす計画だという。

「グローバルスタンダード」の具体例として、島津氏は「Fujitsu Uvance」を挙げた。これは、サステナビリティの観点から社会課題の解決を目指すオファリングやソリューションを提供するブランドだ。

今年2月には、同ブランドの下、コンサル事業「Uvance Wayfinders」を発表し、専門人材を1万人規模に拡充することを発表した

島津氏は、モダナイゼーションビジネスのパートナーにAWSを選んだ理由として、「グローバルスタンダー」「メインフレーム移行で20年以上の実績を持つ“AWS Blu Age”」「戦略パートナーとしての協業成果」を挙げた。

富士通とAWSの協業の施策

「Modernization Acceleration Joint Initiative」では、富士通のミッションクリティカルシステム構築で培ってきたシステムインテグレーションの技術や知見と、企業のクラウドテクノロジーのビジネス活用を支援するAWSプロフェッショナルサービスの経験を融合し、「AWS Mainframe Modernization」などのAWSのクラウドサービスを活用しながら、顧客のイノベーションを迅速かつ安全に支援する。

「AWS Mainframe Modernization」は、メインフレームのモダナイゼーションを実現するため一連の開発ツールやサービス。今回、富士通製メインフレーム「GS21シリーズ」の顧客をサポートするため、最適化が行われた。

具体的には、「AWS Mainframe Modernization」のリファクタリングソリューションである「AWS Blu Age」により、COBOL、PL/Iといったレガシーなプログラム言語をJavaに自動的に変換する。

島津氏は、両社の協業によるモダナイゼーションの先行事例として、髙島屋を紹介した。髙島屋は「AWS Blu Age」を用いて、メインフレームのモダナイゼーションを進めており、移行期間の提言とコスト削減を見込んでいるという。

  • 富士通とAmazon Web Servicesのモダナイゼーションにおける協業の概要

モダナイゼーションのプロセスにAWSのAIを活用

Amazon Web Services グローバルサービス担当バイスプレジデント ウウェム・ウクポン氏は、「レガシーシステムのモダナイゼーションにおいては自動化が重要であり、AWS Blu Ageがそれを実現する。AWS Mainframe Modernizationにより、モダナイゼーションを最速で行い、クラウドの恩恵を受けてもらいたい」と、AWS Mainframe Modernizationの強みをアピールした。

  • Amazon Web Services グローバルサービス担当バイスプレジデント ウウェム・ウクポン氏

加えて、ウクポン氏は「われわれのビジョンでは、メインフレームモダナイゼーションにAIや機械学習を活用する」と説明した。AIを活用してタスクを自動化することで、時間、コスト、リスクを低減するという。モダナイゼーションにおいて、分析、検証、運用、テストといったプロセスでAIが活用される。

さらに、ウクポン氏は生成AIの活用についても言及した。同氏は、ビジネスプロセスの最適化、社員の生産性と創造性の向上、顧客体験の強化において、生成AIが大きな役割を果たすが、クラウドはそのカタリストになっていると述べた。

「富士通とのモダナイゼーションによって、企業の生成AIの活用は進み、そのメリットは増えていく」と、ウクポン氏は語っていた。

両社のモダナイゼーションビジネスの目標は、5年で40社のメインフレームのモダナイゼーション実現だという。40社はいずれも富士通製メインフレーム「GS21 シリーズ」を利用している企業であり、内訳は国内30社、海外10社としている。なお、他社製メインフレームを利用している企業も対象としているという。