大阪工業大学(大工大)は3月15日、天然由来の高分子粒子を使用して、食品の腐敗検出センサとして機能する「リキッドマーブル」(液滴)の開発に成功したことを発表した。
同成果は、大工大 工学部応用化学科の藤井秀司教授、タイ・チュラロンコン大学 理学部化学科のApichat Imyim准教授らの国際共同研究チームによるもの。詳細は、米国化学会が刊行する持続可能な化学とエンジニアリングの関連分野全般を扱う学術誌「ACS Sustainable Chemistry & Engineering」に掲載された。
賞味期限を過ぎた食品を廃棄することによるフードロスが、大きな問題となっている。賞味期限とは、「おいしく食べられる期限」のことを指し、期限を過ぎた直後から食べると危険というわけではない。対して消費期限は、期限を過ぎたら食べない方が望ましいとされている。
このように賞味期限は本来、過ぎた直後なら食べても問題はなく、実際のところ、消費期限を過ぎた食品であっても、未開封かつ冷蔵庫や冷暗な場所での保管であれば、1日ぐらいなら問題ないことの方が多い。しかし、開封してあると冷蔵庫に入れてあったとしても、賞味期限や消費期限は頼りにならなくなる。実際に腐敗は始まっていても、見た目で痛み具合が分からなかったり、異臭がするまでには至っていないこともあり境界の線引きは難しいことも多い。
腐敗している食品は、その原因である細菌が食品の表面に増殖しているということであるほか、細菌によってタンパク質が有害物質などになる場合もあるため、体内に取り込んでしまうことは、食中毒に至るようなリスクがあり、状況によっては入院どころか生死に関わる場合もあり得るだろう。その危険性を考慮すると、それが賞味期限が過ぎたばかりで本当は食べても問題ないとしても、見た目や臭いなどでわからなければ安全面から廃棄せざるを得ない。
一方で、その食品を食べる直前に、本当に腐っているのかどうかを容易に知ることができれば、廃棄を免れる食品も増え、フードロスの削減につながる可能性がある。
食品の腐敗が進むと、アンモニアなどのアミン化合物が腐敗ガスとして発生することで、ヒトの嗅覚でも異臭を捉えられるようになる。技術的に、それらを検出できる食品腐敗検出センサは存在しているが、当然ながらそれらは安価なものではない。しかも、そうしたセンサも完璧というわけではなく、狭い空間における検出が困難であるといった課題が存在していた。そこで研究チームは今回、見た目の変化から容易に腐敗しているかどうかを見分けることができ、なおかつ狭い空間でも利用することが可能なセンサを開発することにしたという。
今回の研究では、カニやエビに含まれる高分子の「キトサン」と、ココナツに含まれる成分の「ステアリン酸」を複合化して合成した天然由来粒子が表面を覆っているリキッドマーブル(直径約2ミリ)を、食品腐敗検出微小センサとして利用することに成功。リキッドマーブルの内側の水滴には、腐敗ガスと触れると色が変わる試薬が溶解させてあり、腐敗が始まっていれば、目視にて容易に食品の腐敗を検出することが可能な仕組みだ。また容易に作製が可能で、転がしたり滑らせたりすることで狭い空間に導入することもできるという。そして当然ながら食品に触れても安全なため、腐敗していないことが確認できれば、その食品を安全に食することができるとしている。