金融庁は温室効果ガス排出量など、サステナビリティ(持続可能性)に関する情報の有価証券報告書(有報)での開示を、東京証券取引所のプライム上場企業に義務付ける方針だ。
国際基準をベースに自社だけでなく取引先も含めたサプライチェーン(供給網)全体を網羅した情報を投資家に提供するように求める。非財務情報であるサステナビリティに関する情報を第三者機関が保証する仕組みも設ける考えで、企業は脱炭素化の加速を厳しく迫られる。
鈴木俊一金融相が2月19日に開いた金融審議会(首相の諮問機関)の総会で検討するように諮問。今後は分科会を通じて具体策を探る。2025年度以降、金融商品取引法改正案の国会提出を視野に入れている。
サステナビリティ情報を巡っては、23年から有報に記載欄が設けられたが、具体的な開示基準が示されておらず、企業によって内容にばらつきがあり、投資家から改善を求める声が高まっていた。
金融庁の新制度が導入されれば、企業によっては負担が過大になる恐れも指摘されている。このため、金融審では開示を義務付ける範囲を約1600あるプライム企業全体とするか、国際的に事業を展開する一部企業(数百社規模)にとどめるかを議論する。
開示情報の正確性を担保する仕組みづくりも重要。国際的にも議論が活発化しており、保証の基準や保証を担う機関の倫理基準などが年内に確定する見込み。金融庁はこれを踏まえ、制度づくりの詳細を詰める考えで、保証の担い手としては監査法人に加え、国際標準化機構(ISO)の認証機関なども想定。
脱炭素化の促進と企業価値の向上、海外からの投資マネー呼び込みという「一石三鳥の仕掛け」(総合政策局幹部)が奏功するか。