学生の期待にどれだけ応えられるか
─ 私立の音楽大学として最も古い歴史を持つ東京音楽大学ですが、少子化時代における東京音楽大学の使命と役割について、丸山さんはどのように受け止めていますか。
丸山 本学は1907年(明治40年)、鈴木米次郎先生が前身である東洋音楽学校を創立したのがはじまりです。現存する私立音楽大学の中で最も古い伝統がありまして、多くの卒業生が音楽で社会に活躍する場を切り拓いてきました。
やはり、わたしは音楽を通じて社会に貢献する人材を育てるというのが、米次郎先生の意思だと考えています。ですから、音楽を通じて、どのように広く、社会に貢献できる人材を育てていけるかということが、私学としての本学の役割なのではないかと思います。
─ 創立者の精神を今に生かすということですね。
丸山 ええ。一般的には、ここ何年も音楽を志す学生数は減少傾向にありますし、大学経営において少子化は本当に厳しい問題です。ただ、そうした中でも、本学は大変人気がありまして、定員(310名)を超える応募がずっと続いています。
ですから、わたしはこれを絶やさないように、大学を今まで以上に元気なものにしなくてはならない。学生たちが大学にどんなことを期待し、学生の期待にどれだけ応えられるかというのが、わたしの最も大事な仕事であると考えています。
例えば、レッスン室を夜遅くまで開放したり、先生方が熱心に指導したりして、学生の満足度を高める様々な環境を整えているのですが、先日、新入生を対象にしたアンケートを実施しました。すると、95.7%が本学に入ったことを誇りに思うと回答してくれまして、大変驚いたと同時に、大いに自慢しているところです(笑)。
─ これは理事長としては非常に有難いことですね。
丸山 これは本当に有難いと思っていまして、俗にいう偏差値はそんなに高くないかもしれませんが、本学は第一志望で入ってくる学生が多いんです。これは東京大学でも、早稲田大学でも、こんなに多くないのではないかと思います。
わたしは法曹の世界にいるので、音楽の世界は今まで全然分からなかったんですが、本当に学生の皆さんは熱心に練習している。本当に1日中練習していて、朝から夜の9時頃まで、ずっと練習しているんです。
やはり、音楽の技術があるということもそうですが、子供の時からずっと一つのことに打ち込んできて、一つの道に熱心に取り組むことのできる人というのは、例え、将来、音楽以外の道に進んだとしても、必ずどこかで力を発揮できる人間になると思います。
─ 音楽でも、スポーツでも、何事も一つのことに打ち込める人というのは強いですね。
丸山 はい。自分の学生時代を考えると本当に恥ずかしくて、わたしは授業が終わったら遊びに行ったり、居酒屋に行くことばかりを考えていたんですが、本当に今の学生たちは真面目で頭が下がりますよ(笑)。
2022年に池袋キャンパスの中に寮を新設したんですが、寮の学生は寝る直前まで練習したいというので、夜11時までキャンパスを開けています。それくらい学生たちは熱心に練習していますね。