米半導体大手エヌビディアが発表した2023年11月~24年1月期決算は、売上高が前年同期比3.7倍の221億ドル(約3兆3000億円)、純利益が8.7倍の123億ドル(約1兆8000億円)といずれも過去最高となった。
生成AI(人工知能)ブーム到来による半導体需要の急拡大が収益を押し上げた。予想を上回る業績に好感が広がり半導体銘柄が大きく買われたことで、日米欧の株価が最高値を更新。
ジェンスン・ファンCEOは決算説明会で、「エヌビディアのAIスーパーコンピューターは、産業革命において不可欠な物資だ」と自信をのぞかせた。 同社は生成AI開発に欠かせない半導体の世界市場シェアの8割を握っている。
文章や画像、音楽を作成する生成AIは、スタートアップ企業「オープンAI」が開発したチャットGPTの実用化をきっかけに22年以降、ビジネスや日常生活に急速に浸透。生成AIの普及拡大見通しに伴い、エヌビディアの株価は1年間で3.3倍と大きく伸びた。今年2月の決算発表後も勢いは衰えず、時価総額は一時2兆ドル(約300兆円)を超えた。
同社の好業績が相場に楽観ムードをもたらし、日経平均株価は1989年以来、34年ぶりに最高値を塗り替えた。
生成AIに関連した半導体需要の底堅さは当面続きそうだが、軍事転用を防ぐため、米国が導入している対中輸出規制が業界に影を落とす。エヌビディアは規制に抵触しないよう、性能を落とした半導体を中国に出荷しているが、同国向けの売り上げは落ち込んでいる。
一方、生成AIは偽情報の発信リスクがあるため、世界的に規制議論が盛ん。厳しい規制が導入されれば、「生成AIブームは一気にしぼむ」(アナリスト)可能性もある。
人間の知能を超えるシンギュラリティへの不安を抱えながら、どのように新たな技術を発展させていくか。そうした中でのエヌビディアの伸長である。