〈再発防止と信頼回復へ〉ENEOSホールディングス新社長に宮田知秀氏

「日本のエネルギー・素材の安定供給とカーボンニュートラル(温暖化ガスの実質排出ゼロ)社会の実現に向け、その役割を求められ、社会から信頼される存在にならないといけない。生まれ変わる覚悟をもって、グループ経営をリードしていく」

 こう語るのは、ENEOSホールディングス副社長の宮田知秀氏。

 2代続けて、経営トップの不適切行為が発覚したENEOSホールディングス(HD)。昨年末から空席となっていた社長職に、社長代行をつとめていた宮田氏が昇格することになった。4月1日付け。宮田氏は東燃ゼネラル石油の出身で、東燃の出身者としては初のENEOS HD社長となる。

 また、4月からはグループの運営体制を見直す。実質的な事業持ち株会社体制を解消し、これまでHD社長が兼務していた事業会社ENEOSの社長を切り分け、ENEOS社長には執行役員の山口敦治氏が就任。各事業会社の責任や役割を明確にし、個々の会社でスピーディーな意思決定や業務執行ができるようにする。

 宮田氏は1965年5月大阪府生まれの58歳。90年東京工業大学大学院原子力工学修士課程修了後、東燃(現ENEOS HD)入社。和歌山工場長や川崎工場長を歴任した。

 宮田氏を選定した理由について、同社の指名諮問委員会議長で、社外取締役の工藤泰三氏(日本郵船元会長)は「人材デュー・ディリジェンス(査定)を通して、候補者の中から、お酒、ハラスメント、規範逸脱の3つのリスクに関する調査を重ね、行動特性を含む性格診断を徹底して判断した」としている。

 石油元売り業界首位のENEOSだが、もともと業界には、全国のガソリンスタンドのオーナーなどとお酒を飲んだりする風習があるのも事実。そうした中、飲酒文化のあり方をどう考えるか。そして、再発防止と信頼回復をいかに進め、事業の転換を促していくか。

 新社長の宮田氏に課せられた使命は重い。

翁百合・日本総合研究所理事長「企業は、企業価値向上と社会課題解決の『二兎を追う』成長戦略の実行を」