島津製作所と東北大学は3月13日、生体の老化メカニズムに関連する超硫黄分子の特性を明らかにして、さまざまな疾患の診断や治療法の確立、健康を増進する機能性食品の開発への貢献を目的とした「島津製作所×東北大学 超硫黄生命科学共創研究所」を2024年4月1日付で設置する契約を締結したことを発表した。
血液や臓器内に存在するアミノ酸などの有機化合物に硫黄が結合した物質の総称である「超硫黄分子」は、強力な抗酸化作用を持ち、活性酸素の働きをコントロールすると考えられており、その代謝メカニズムを解明することで、新たな診断・予防・治療法の確立や機能性食品の開発への応用が期待されているという。
この超硫黄分子研究の第一人者が、2017年に世界に先駆けて生体が超硫黄分子を介してエネルギー代謝を行っていることを報告したことでも知られる東北大学大学院 医学系研究科 環境医学分野 赤池孝章教授で、島津製作所は2020年より新型コロナウイルス感染症に理解に向けた赤池研究室と共同研究を開始、2021年には同社の液体クロマトグラフ質量分析(LC-MS)を用いて生体内の超硫黄分子を測定するソフトウエア「LC/MS/MSメソッドパッケージ 硫黄代謝プロファイリング」を開発する成果などを挙げてきた。
設置される共創研究所は、2024年4月から3年契約(2024年4月1日~2027年3月31日)の取り組みで、より多くの種類の超硫黄分子を一斉に分析する手法の開発、島津製作所のイメージング質量顕微鏡「iMScope」を用いた超硫黄分子の臓器内分布の観察などに取り組むことが予定されている。
運営総括責任者には、東北大大学院 医学系研究科の山口亮 特任教授(島津製作所 分析計測事業部 Solutions COE インスツルメンツエキスパートグループ 副グループ長)が就任するほか、運営支援責任者として赤池教授が就任。東北大からは、このほか、同大大学院 医学系研究科の本橋ほづみ 教授、同 鄭珉境 学術研究員、同 吉武淳 学術研究員が参画する。
島津製作所としては、LCMSでの超硫黄分子分析の手法検討やiMScopeを用いた超硫黄分子の生体内分布の解析に対するサポートを行い、そうして得られた成果を創薬支援や予後予測、健康増進を目指した食品開発などに役立つ技術の開発につなげていくとしている。