ソニーグループが主力のゲーム事業で900人の人員削減に着手

ゲーム市場の成長が減速?

「厳しい決断は不可避と判断し、事業の構造改革を行うことにした」ーー。

 ソニーグループ(G)傘下で「プレイステーション(PS)5」などのゲーム事業を手がけるソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)のジム・ライアン社長は、2月27日の声明で人員削減計画の背景をこう説明した。

 SIEが社員の8%ほどに当たる約900人の削減に着手する。欧米や日本などの全世界で開発や間接部門の従業員を減らす。日本では他社への再就職の支援をしていく方針だ。

 ゲームはソニーGの連結売上高(約12兆円)の3割程度を占める主力事業であるものの、近年は計画通りに実績を上げられない場面が目立つ。同社は2月、24年3月期のPS5の出荷計画を従来の2500万台から2100万台に下方修正。ゲーム事業の通期売上高は、昨年11月時点の見通しから2100億円下方修正して、4兆1500億円の見通しだ。

 PS5の発売は20年11月で、巣ごもり需要を追い風に普及してきたが、その勢いはコロナ禍の収束とともに鈍化。22年夏の時点で、副社長(現社長)の十時裕樹氏が「(消費者の)外出機会が増加し、ゲーム市場全体の成長が足元で減速している」と述べるなど、かじ取りの難しさをうかがわせていた。

 一方でソニーGは、ゲーム事業への大規模な投資を行ってきた。22年4月、米ゲーム大手エピックゲームズに10億ドル(当時の為替レートで約1250億円)を追加出資すると発表。同年7月には同業の米バンジーの買収を完了した。バンジーの買収総額は約37億ドル(同約5100億円)に上った。

 拡大路線を進めてきただけにSIEでのリストラに、今後は従業員の士気への影響も懸念される。また、市場では「円安でバンジーの買収額が当初想定より日本円換算で1000億円程度膨らんだ。ゲーム市場の減速も想定より急だった」(業界関係者)など、ソニーGの〝誤算〟を指摘する声もある。

 同社は25年3月期のPS5販売数も前期比で緩やかに減少するとみており、他の収益源の強化が求められそうだ。

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