TrendForceによると、中国資本の半導体製造装置業界の分析レポートによると、中国の半導体製造装置産業は先端リソグラフィを除いて半導体製造に必要なさまざまなプロセスをカバーできるようになってきている模様だという。
中国企業が手掛ける製造装置の中でもフォトレジスト剥離、洗浄、エッチングなどのプロセスにおいて比較的高い現地化率となっているほか、CMP、熱処理、蒸着などのプロセスが進歩を見せているとする。しかし、計測、塗布・現像(コータ・デベロッパ)、リソグラフィ、イオン注入関連の装置については、中国メーカーは依然として課題に直面しているともしている。
SEMIのデータによれば、ウェハ処理、ファブ施設、マスク/レチクル装置を含む半導体製造装置市場は、2023年に前年比3.7%減の906億ドルになった模様だが、半導体に対する継続的な需要の増加を背景に2024年以降は回復基調となり、2025年には史上最高値となる1240億ドルに到達することも予想されている。この需要の最大のけん引役はファウンドリの生産能力拡大で、ファブの拡張に向けた設備投資の約70~80%が半導体製造装置の購入に割り当てられるという。
TrendForceの調査では、2023年末の中国では44のファブが稼働しており、その内の25つが300mmファブ、15つが200mmファブ、4つが150mmファブだという。さらに、15つの300mmファブならびに8つの200mmファブ、合計23ファブが建設中。加えて、SMIC、Nexchip、Silan Microなどの中国系半導体企業が、10のファブ建設計画を立てている模様で(内訳は9つが300mm、1つが200mm)、全体として、中国では2024年末までに成熟プロセスに焦点を当てた32の大規模工場が建設されると予想されている。
TrendForceによると、2023年から2027年まで世界の成熟プロセス(28nm以上)と先進プロセス(16nm以下)の生産能力の比率は約7:3を維持すると予想されるという。中国政府の助成金を活用した現地化促進政策により、中国は世界の中でも積極的に成熟プロセスの生産能力拡大が進んでおり、その結果、中国の成熟プロセスの生産能力割合は2024年の29%から2027年には33%まで増加することが予測されるという。
主要半導体装置メーカー各社の中国売り上げは軒並み4割超え
近年の中国の半導体製造装置産業が急成長を遂げる一方、Applied Materials(AMAT)、東京エレクトロン(TEL)、Lam Resaerch、ASML、KLAなどの世界的な半導体製造装置大手各社も中国市場での売り上げを2023年後半から売り上げ全体に占める比率が4割前後に至っており、中国企業による製造装置の能力や供給体制はまだ十分といえないこともうかがえる。
こうした近年の中国での半導体製造能力の拡大を踏まえ、米国政府は米国の半導体製造装置メーカー各社に対し、合法的な理由のもと、輸出規制ができないか検討しているという話もでている。例えばAMATの中国への輸出をめぐって、連邦当局の捜査が拡大していると一部の米国メディアが2023年秋ごろに報じていたが、同社は2023年11月に規制を回避する形でSMICに製品を輸出した疑いで刑事捜査を受けた模様である。関係者によると、AMATが正式な輸出許可を得ないまま、韓国経由でSMICに数億ドル相当の半導体製造装置を輸出した可能性があるとのことで、米商務省も特定の中国顧客向けの出荷に関する召喚状をAMATに送付していた模様である。このほか、2024年2月にも、米証券取引委員会(SEC)とマサチューセッツ州の連邦検事局からの召喚状を受け取っていることをAMATは明らかにしている。
米国政府はさらなる対中半導体規制強化を検討か?
レモンド米商務長官は3月11日、出張先のフィリピンのマニラで記者団に対して、「中国の軍事的発展のために米国の最先端技術にアクセスさせるわけにはいかない。規制強化を含め、米国民を守るために必要なことは何でもする考えだ」と述べ、先端半導体製造技術への中国のアクセス制限を一段と強化する可能性を示唆したと米国メディアが伝えている。
なお米政府は、すでに日本やオランダに加え、ドイツや韓国などに対しても、半導体技術への中国からのアクセスを制限するよう圧力をかけていると米国メディアは報じており、成熟プロセス用との名目(一部は先端プロセスでも使用可能)で中国に輸出されている半導体製造装置に関しても今後規制が強化される可能性がある。