ソフトバンクとキリンビバレッジは3月12日、AIを活用した自販機オペレーション最適化サービスである「Vendy(ベンディ)」に関する記者説明会を実施した。
同説明会には、ソフトバンク 法人事業統括 デジタルトランスフォーメーション本部 第三ビジネスエンジニアリング統括部 オペレーションデザイン事業推進部 部長の松山誠氏、キリンビバレッジ 営業部 戦略推進担当 主務の吉岡弘隆氏が登壇し、サービスの概要や背景を紹介した。
ソフトバンクの考える「自販機業界の課題」
ソフトバンクは、超デジタル社会を支える次世代デジタルインフラの担い手として、社会課題解決に向け、保険や飲食・小売、医療、スマートシティなど、さまざまな領域のデジタル化やDX(デジタルトランスフォーメーション)化を推進している。
そんなソフトバンクは、注力領域でもある飲食・小売りの領域における自販機の存在を「日本が世界に誇るビジネス」として捉えているという。
「自販機には多くのビジネス的な強みがあります。まず、全国各地に約400万台の自販機が稼働しているという点です。多くの筐体が設置されているということは、それだけ顧客とのタッチポイントも多いということになります」(松山氏)
松山氏は、上記で挙げた顧客接点の強み以外にも、「24時間365日稼働していること」「災害時のライフラインとして活用できること」など、自販機にはビジネスとして強みが多くあると語った一方で、「労働力不足問題」や「ECサービスの台頭」、「多様化する顧客ニーズ」など、さまざまな課題を抱える業界でもあると説明した。
「2024年問題を発端とする労働力不足は業界全体の大きな課題であり、人手が必要な運用方法を変革する必要があります。特に自販機の維持に不可欠な管理や運営を行う自販機オペレーションは、アナログな運用も多く、デジタル化・効率化の余地が大きいと考えています」(松山氏)
自販機のオペレーション業務効率化を目指す「Vendy」
このような背景をもとに開発されたVendyは、自販機の最適な巡回ルート(巡回計画)や商品ラインアップ(棚割り)などを自動で生成する「AI分析機能」と、自販機向けの通信機や管理画面を含めたソリューションをワンストップで提供するサービスだ。
販売データ(過去売上・直近売上・在庫情報)、自販機データ(自販機マスタ・設置先契約条件)、コスト情報(自販機の巡回にかかる費用・商品替えにかかる費用)を同サービスにインプットすることにより、販売予測をもとにした自販機ごとの利益の計算などを行うことでDXを実現する。
具体的には巡回計画/積載計画の生成や商品構成リストの作成が行えるほか、売上や在庫の管理、釣銭切れ、故障検知、遠隔設定などをオンラインで行うことが可能となっている。
同サービスは、「自販機のオペレーション業務効率化」と「設置先に応じた商品ラインアップの最適化」を実現し、自販機業界の課題解決を図ることを目的としたサービスで、2025年9月までに、全国で約8万台の自販機に導入される予定だという。
なお、サービス開発にあたっては、オペレーターのトラックに同乗して、現場の業務課題を体験することで徹底した現場理解を進めてサービス開発が実施され、ソフトバンク・キリンビバレッジ・富士電機の3社が一丸となって、自販機オペレーション業務の課題解決に対峙しているとのことだ。
特にキリンビバレッジは10月からキリンのグループ会社が管理する自販機にVendyを順次導入することを発表しており、会見に登壇した吉岡氏も自販機のオペレーション業務効率化に期待を寄せていた。
「Vendyは、自販機業界における人手不足や廃棄ロスの課題解決にも貢献するため、弊社グループだけでなく、自販機オペレーション業務を行う企業においても有益なシステムであると考えています。弊社は、業界に先駆けて導入を決定することで、ソフトバンクとともに自販機オペレーションの業務効率化やサービス向上に取り組み、持続可能な自販機オペレーションの実現を目指していきます」(吉岡氏)
Vendy導入による業務変革
松山氏はVendyの特徴として、「自販機業界に特化した独自AIアルゴリズムの活用による高精度な分析・予測」「オペレーション業務改善ソリューションをワンパッケージで提供」「導入しやすい価格体系」という3点を挙げた。
これらの特徴から、Vendyを導入することで、以下の業務変革が期待できるという。
また価格については、同サービスはSaaS型で提供されているのに加えて、検量機器の購入やAI開発費用などの初期コストが不要となっていることが特徴となっているという。またサービスの提供にあたって「ライトプラン」「アドバンスドプラン」「プレミアムプラン」の3つのプランを用意。
ライトプランは、自販機の売上や在庫をリアルタイムで可視化し、オンライン検量システムをまだ導入していない顧客や既存のシステムを刷新したい顧客を対象に、通信機と管理画面が提供される。
アドバンスドプランは、AIの需要予測による分析と予測を行い、オンライン検量システムをすでに導入している顧客やデータ活用によりさらなる業務改善をしたい顧客を対象に、AI分析と管理画面が提供される。
プレミアムプラン自販機情報の可視化とAIによるデータ分析を行い、オンライン検量システムとAIによるデータ活用をこれから両方行いたい顧客を対象に、通信機とAI分析と管理画面が提供される。
ソフトバンクは、今回発表したVendyの提供を通して自販機業界のDXを推進し、自販機業界における業務効率化や廃棄ロスの削減、売上向上などに貢献することを目指していきたい構えだ。