リビングでドラマを観ていたら、俳優さんの着ている洋服が気になった。すぐに買いたいと思ったけど、スマートフォンは寝室にあって取りに行くのは煩わしい。後で探そうとしたが、ドラマが終わった頃には、そのこと自体を忘れている……。
【ずいひつ】ジンジブ・佐々木満秀代表取締役が語る「日本の活力を取り戻すため高卒生の可能性を広げたい!」
こんな経験をした方は多いのではないでしょう。もし、気になったものがテレビ画面に出て来て、それをすぐに注文できるようになれば購買体験はより便利で豊かになり、メーカーも機会損失を防ぐことができます。
実は当社はスマホで動画を触ると、洋服や人物、音楽など知りたい情報に即座にアクセスできる技術「Tig(ティグ)」を開発。この技術の特徴は動画の再生を止めることなく、簡単に視聴者が触りたい場所に触れることができる点です。特別な操作も不要で、触ってみて指を動かすだけ。
ある調査によると、映像1分間で静止画2000枚に相当する情報量を提供することができていると言われています。テキスト文字で換算すると100万語と言われています。それだけ動画などの映像には情報を詰め込むことができるわけです。
この発想自体は私の学生時代の原体験で生まれました。14歳から19歳までの5年間、私はカナダに留学しました。その学校は全寮制で当時の日本人は5人いました。ただ、7つの寮があり、日本人は1人ずつ配置されたのです。ですから、寮生活は全て英語。リビングのテレビから流れる映像を観て、英語の離せない私以外の皆が笑っている。
「画面をタッチして日本語が流れれば自分も分かるのに」─。そんな悔しい思いをしたことを今でも覚えています。大学を卒業して日本テレコム(現ソフトバンクグループ)を経て、ソフトバンクで映像伝送技術を担当。その後の独立のきっかけはアイフォーンの誕生でした。
ボタンをポチポチ押さなくても動画を観ることができるではないですか。学生時代に描いた夢を実現できる片鱗が見えた瞬間でした。2016年、私は当社を設立し、Tigを開発。今ではニトリやカインズといった企業や地方自治体、大学などにも導入いただいています。
この技術は広告だけに留まりません。例えば、竹中工務店にも導入いただいているのですが、同社ではベテラン技術者がスキルやノウハウを言語化して説明・指導することが難しいという技術承継に当社の技術を使っていただいています。
一連の工事内容を動画として記録した上で、ベテラン技術者が勘所となる重要な部分の動画の中にタグをつけ、その作業のポイントや注意事項を説明できるわけです。若手技術者はベテラン技術者の勘所を言語化することなく習得することができるようになります。
さらにTigならではの長所は動画の画面内で何が見られているかを示すヒートマップとして可視化することができる点です。これにより、どんな点が注目されたのかを把握することができます。そこで得た知見を次の商品・サービスの開発に活かせたり、さらなる改善につなげることもできるでしょう。
私は人々の伝え方を再定義したいと考えています。言語化しても伝えられないことを正確かつ効率的に伝えることができれば、世の中の可能性はもっと広がると思うのです。
人間は判断の70%を視覚に依存していると言われています。人間の本能に対応した新たな技術でECや音楽などのエンターテインメント分野のみならず、観光や教育、シニアマーケットなど、幅広い分野での社会実装を目指していきます。