セルソース創業者・裙本理人「人の血液、幹細胞を活用した『ひざ変形関節症』に強み、『乳房再建』、『不妊治療』の研究も進む」

「再生医療」関連事業を手掛ける企業として2015年に創業。19年に東証マザーズ(現グロース)に上場し、現在は東証プライム市場に上場。

 強みを持つのは、ひざの変形性関節症という整形外科領域で、人の血液、脂肪由来の幹細胞を活用する。同社の調べでは臨床に用いられる細胞加工受託で日本におけるナンバーワン企業。

 創業者で、現在代表取締役CXOの裙本(つまもと)氏は住友商事の出身。「いつか、よりチャレンジングな環境に身を置きたいと考えていた。挑戦するなら市場規模が大きい領域をテーマにしていた」

 起業の後押しとなったのが、14年の「再生医療等安全性確保法」の施行。日本が世界に先駆けて、再生医療のレギュレーションを定めたもので「業界にとって大きな一歩だった。チャレンジするしかない」と起業。

 前述の通り、今はひざの変形性関節症に強みを持つが、この領域を手掛けるのも、日本全国でひざに悩みを抱える人が約3000万人いるというニーズの大きさから。累計7万件以上の血液・細胞の加工を手掛けてきたが「いま我々が手掛けている数百倍規模の患者様がおられる」と事業拡大余地が大きいと見る。

 保険外診療で、費用は血液の場合で平均20万円、脂肪由来幹細胞で80万円から120万円という水準。既存治療と比べて高いが「ひざの痛みが消え、歩けるようになることを価値換算すると安いと思われると思う」。

 ひざ以外に「乳房再建」や「不妊治療」に関して、大学との共同研究、患者への投与が始まっている。さらに脳卒中の後遺症、パーキンソン病、肺の疾患などの領域で研究を進めている。

 住友商事では「厳しい経験をしたい」とロシア東部の街・プラスタン赴任を希望。約4年、木材加工工場の立ち上げに従事。「この時より厳しい経験はないのではないかと思っている」

 社会になくてはならない企業になるために「時価総額1兆円」の実現を目標に掲げる。そのために社内には「変化しなければ生き残れない。変化を厭わないことが企業、組織の成長の秘訣」とハッパをかける日々だ。