企業価値協会・武井則夫代表理事が語る「社会価値経営のすすめ」

多様化する価値観、インフレ、先が読みにくい経営環境の中でどこに向かえば良いのか。経営者の心の声が聴こえてきます。

【ずいひつ】ケップルグループ・神先孝裕代表取締役CEOが語る「スタートアップの成長を支える「セカンダリー市場」の形成を」

 世界の様々な動向の中で、経営の大テーマのひとつが「社会課題」です。以前より会社は「社会の公器」と言われる通り、事業は本来、人の役に立つ代行業として成り立ってきました。つまり、全ての会社に何らかの社会価値があります。

 現在、上場企業は株主からのESG圧力もあり、社会課題に取り組んで成果を出しています。また、スタートアップ企業は社会課題の解決を経営のど真ん中に据えてAIなどの最新技術を駆使して挑戦しています。しかし中堅中小企業ではこの動きがまだ弱い。

 私たちは企業の価値について数多く見る中で、中堅中小企業は、人材、技術、設備、人脈、信用などたくさんの誇るべきリソースを持っていることに気付かされました。そこでこの宝を軸として地元、業界、社員に関わる「身近な社会課題」に対象を絞り込むことで、周囲を幸福にする進化を起こすことが次の光明だと考えたのです。

 企業価値協会では、社会課題の解決を経営の中心軸に据えて本業を進化させる「社会価値経営」を掲げ、以下のステップで共に取り組んでいます。

 1 お客様や社会から求められる独自の価値の認識

 独自の価値=特徴的価値を抽出します(企業価値認定の取得)。特徴的価値は、自社が提供できて、他社が提供できなくて、お客様や社会が求める価値であり、多面的にできるだけ数値を使い明文化します。

 2 特徴的価値の中から社会課題に関わるものを抽出し社内外に広報

 既に社会課題解決に貢献している特徴的価値を抽出します。HPに公開すべき内容が多く、更に社内周知で社会価値経営の土壌づくりが進みます。

 3 本業の中身を進化させて新たな価値創出

 地域、お客様、サプライチェーン、社員に関わる社会課題を対象に仮説を立て、壁打ちを重ねます。結果的に売上、粗利益、コストに貢献するスキームを組み立てるのが肝です。これによって新商品・サービスの創出、商品改良、新技術、新規顧客や販路開拓、値上げ、新市場進出、仕入先や業務委託先の開拓、業務改善で間接費削減、ブランディング、新規開拓コスト・広告費・採用コストの抑制、有望な人材の採用など結果として様々な効果が複合的に生まれていきます。

 4 外部の知見、リソースを活用してもう一段進化

 解決したい社会課題に優れた知見を持つNPO、企業、団体、大学との提携で事業の広がりやレベルアップを促進しています。時間も短縮できる上、特徴的価値との相乗効果で事業の質も成功確率も高まります。

 5 社会課題への取り組みが中心軸となり価値を高め続ける社会価値経営へ

 社会課題を意識することが当たり前という社風となり、経営判断の大きな基準となっています。この状態になるとお客様も情報も人材もコラボの話も、そして資金までもが自然と集まってくる磁石のような会社となり、好循環が回っていきます。

 このように周りから自社にベクトルが集まってくる状態こそが、社会から応援される会社の証であり、日本中の会社にこうなって欲しいのです。そして、このような誇り高き魅力企業が増えることが、日本の特徴的価値となり世界から注目されると確信しています。