独ザクセン自由州(ザクセン州)が半導体人材育成を目的に、国立台湾大学とTSMCの協力のもと、同州の大学生を対象に台湾での半導体研修プログラムを開始したことを明らかにした。
TSMCは2023年8月、世界的な製造ネットワークを欧州へと拡大することを目的とした拠点として、独ザクセン州の州都ドレスデンに製造子会社「ESMC(European Semiconductor Manufacturing Company)」を設立する計画を掲げ、2027年末までに量産を開始することを目指している。
今回のプログラムは、そうした動きに対応する人材育成を目指したもので、ザクセン州政府は、ドレスデン工科大学をはじめとする州内の大学から、台湾での研修プログラムへ応募した124人の中から30人を選び、台湾へ派遣、30人全員が台湾大学に一学期間の履修届を提出したという。
3月6日には台湾大学にて歓迎式典が開催され、実際のプログラムがスタートした。ほとんどがドイツ国籍の学生だが、中にはインド、パキスタン、ポーランドなどからの留学生も含まれるという。これらの学生は、台湾大学で半導体および関連の専門知識を4か月にわたって学び、その後、台湾のTSMCトレーニングセンタで同社独特の文化の習得を図るとともに、半導体工場でインターンとして半導体製造を体験することが予定されている。このプログラムは、将来のTSMCドイツ工場(ESMC)の人材プールが目的の1つとなっているが、TSMCへの就職は必ずしも義務つけられてはいないという。
この研修プログラムは、2023年9月にTSMCとザクセン州との間で調印された協定に基づくもので、2025年には対象人数を80人、2026年には100人にまで拡大する予定だという。最近は台湾での研修を希望するドイツ人学生が多くなっていることから、さらに定員を増やす可能性もあるという。ただし、台湾大学には数十人の受け入れ余地しかないため、ザクセン州は、台湾大学のほか、国立台湾科技大学、国立陽明交通大学、国立清華大学、国立中興大学などとも提携する形で2025年から同種の研修プログラムを始める準備をしている模様である。
なお、台湾におけるザクセン州の文化的および経済的利益と科学交流を代表および促進することを目的としたザクセン州科学連絡事務所が2023年9月に台北に開設されており、この計画の促進役として機能しているという。