金利を注視しながらチャンスを逃さぬ姿勢を継続
─ 変化をどう捉えていくか。いま金利が付き始め、為替も激しく動いたりしますが、大和ハウス工業社長兼CEOの芳井敬一さんは、住宅産業、物流、データセンターと、幅広く事業をされていますね。新年の金利動向と合わせて、住宅産業についての見通しは?
芳井 わたしは従来から、金利がないのは問題だと思っております。住宅の金利はさておきながら、金利の付いたお金を借りて、利息を返してそれ以上にパフォーマンスを上げる。これが大事であると思っています。
金利が上がるということは、やはり国力も上げると。その分当然賃上げもしていかないといけないし、一方でいろんなコストも上がると同時に、消費者物価指数(CPI)も上がらなくてはならないと思っているので、こういう流れができない限り、日本の住宅業界の景気回復は厳しいだろうと思っています。
特に住宅ローンは9割近くの方が変動金利で借りている。でも、この23年10月ぐらいから少し様子が変わってきて、3割ぐらいが固定金利に流れています。ということは、この先、変動金利が1%上がったら賃上げ分は全て吹っ飛びます。この2年は対前年比を割る勢いですから、非常に厳しい環境だと思っています。
─ 大和ハウス工業は、物流関連、データセンター事業も手掛けていますが、今後この分野は拡大傾向ですか。
芳井 ええ。特に物流施設で、用地の取得に関しては非常にプレイヤーが多くなっているので、金利が上がってくれば、当然その分野は我々の強みなので大きなチャンスがあります。
元々、大和ハウス工業というのは、選ばれなかった会社が頑張った結果が今だと思っています。当社の人間が、一生懸命請負工事をいただきに行っても、われわれに発注する人は非常に少なかった。だから、本当に選ばれなかった企業が選ばれる方法をずっと考えて行動に移してきました。それが、わたしたちの用地取得の考え方です。
選ばれなかった企業は恐がりなので、この土地が誰の土地かということを常に見ているわけです。アパートも含めて、今は生産緑地だけど、相続が起こると生産緑地じゃなくなるかもしれない。その瞬間を僕たちは逃すわけにはいかないのです。
─ 真剣だと。米国での戸建て請負状況はどうでしょう。
芳井 やはり米国は金利の振りが強いです。10月には8%が見えかけたので、結構キャンセルが出ました。しかし、6~7%では依然として売れるので、まだまだ米国経済の底力を実感しました。