【2024年をどう占う?】答える人 SBIホールディングス会長兼社長・北尾吉孝

金利・政治で下期が大転換点

 ─ SBI新生銀行の設立や地銀との提携を進めてきているSBIホールディングス会長兼社長の北尾吉孝さん、今後の世界および日本経済をどう見ていますか。

 北尾 23年度の下期が政治も含めて大転換点になっているのではないかと思っています。米国ではあと1回ぐらいの利上げはあるかもしれませんが、ほぼ打ち止めと考えていいのではないかと。ヨーロッパは完全にその方向に向かっています。問題は日本です。今の状況は為替が安くなっているので、物価が輸入インフレになってしまっているのです。

 ですから、まずこの為替を何とかするために、金利政策を変更するということが23年度下期に起こってくると思います。それが、金融業全般にも、ほかの業種・業界においても様々な影響を与えるでしょう。

 米国は大統領選を控えていますが、米国から来るお客様と会っていると、ドナルド・トランプ氏を支持する声が増えていると感じます。この大統領選の行方は、ウクライナ問題など戦争関連にも影響が及びます。

 ─ 日本株の売買手数料ゼロを打ち出しましたが反応は?

 北尾 業界にとっては大きなインパクトだと思います。手数料ゼロ宣言をしてから、われわれの口座数は8月、9月、10月とすさまじい勢いで増加しています。

 他方、対面や地場の証券会社にとっては、今後厳しい局面が来るかもしれません。しかし、国民経済的に見れば良いことだと思います。顧客にとって良いことをするのが商売ですから。新NISA開始やiDeCoの改善等、国民の資産形成に関してずいぶん環境が変わり始めていますので、タイミングも良かったのかもしれません。

 われわれの見通しでは、昨年実績で200億円程度の営業利益へのロスがあると見ていましたが、今はほぼゼロかプラスでいけるというような期待感が出てきました。また、われわれは企業生態系を構築しているので、SBI証券の口座が増えることは、グループ各社にポジティブな影響を及ぼしていると感じます。

 ─ そういう意味では日本経済に刺激を与えていると。半導体事業への参入も驚きでした。

 北尾 あれも天意と言いますか、相手から声を掛けていただいたのですが、不思議なご縁でした。われわれはこれまでも金融事業に加え、投資事業をアクティブにやってきました。

 とりわけ、ベンチャー企業への投資は技術を獲得する上で重要だと思っていて、「投資・導入・拡散」のプロセスが投資戦略の1つなのですが、そうした投資戦略や金融事業でつくり上げた「生態系」という考え方は、半導体事業にも生きると思うんです。ですから、少し今までと違った新しい考え方で事業に取り組んでみようと。

 既にこれを機に、様々な事業会社といろんなお付き合いが生まれており、当社の法人事業や地方創生戦略においても大きなプラスになっています。