三菱電機は、ファイバーレーザー加工機「GX-Fシリーズ」の説明会および見学会を愛知県名古屋市にある名古屋製作所において2月8日に開催した。

新機能を必要な時にアップグレードできるレーザー加工機「GX-Fシリーズ」

従来、レーザー加工機を含む多くの機器の性能は購入する時が最も高く、その後、新たに開発された機能を使用したい場合は、その技術を搭載した新たな製品を改めて購入しなければならなかった。これでは、多くのコストが必要になり導入の障壁となるほか、まだ機能的には使える加工機でも廃棄することになってしまいサステナビリティの観点からも問題視されていたという。

そこで三菱電機が開発したレーザー加工機が「GX-Fシリーズ」となる。同シリーズは、顧客のニーズをくみ取った新技術を毎年開発し、そうした技術の中で必要なものだけを必要なタイミングで追加できることを売りにしており、これから導入する顧客はもちろん、すでに同シリーズを保有している顧客でもアップグレードを図ることを可能としている。

  • 三菱電機のファイバーレーザー加工機「GX-Fシリーズ」の外観

    三菱電機のファイバーレーザー加工機「GX-Fシリーズ」の外観

従来の最新モデルであった2023年モデルでは、2つの新技術が提供された。1つは加工時の音と光をセンシングし、AIで加工状態を判定、その結果をもとに自動で加工条件を調整し、その時々に応じた最適な加工を行うことで安定性や生産性を向上させる「AIアシスト2.0」。もう1つはレーザー発振器や加工ヘッドを制御し、ビーム特性と加工に関わるパラメーターを厚板に最適化し高炉材厚板などの従来の加工法では難しかった加工材でも安定的な加工を実現できる厚板切断技術「Mz-Power」である。

2024モデルとして導入される3つの最新技術

そして2024モデルとして2024年4月より新たに導入される技術は3つあるという。

まず1つ目は、アシストガスに窒素とエアーの混合ガスを用いた技術「AGR-Mix」。レーザー切断では、レーザー光をワークに照射し溶融させると共に、レーザー光と同軸に配置したノズルからレーザーの照射により生まれる溶融物を、アシストガスを吹き付けて除去し切断するが、従来ある「酸素切断」はバリの高さも安定しており品質が高く、加工ガスの使用量も少ないため低コストなどのメリットがあるものの、加工速度が遅く酸化被膜が発生してしまい高出力機導入の効果が薄れるといったデメリットがあったという。またもう1つの方法としてある「窒素切断」は加工速度が速く、酸化被膜も発生しないなどのメリットがあるものの、バリが高く処理に手間がかかるほか、酸素切断に比べてランニングコストが高いといったデメリットがあったという。

今回同社が開発したアシストガスに窒素とエアー混合ガスを用いたAGR-Mixは、酸素切断の高い加工品質と窒素切断の加工速度の速さといった両者のメリットを掛け合わせることを可能としたほか、窒素ガスの一部を安価なエアーで代用することでランニングコストも下げることに成功。同社の比較では酸素切断の約2〜10倍の速さを実現しつつ、切断ではバリが出にくく、窒素切断時よりもバリの高さは約60%削減したという。

  • 酸素切断、窒素切断、AGR-Mixで切断した加工サンプル

    酸素切断、窒素切断、AGR-Mixで切断した加工サンプル

2つ目は、金属板からパーツを切り離しやすいようにする技術「ライトジョイント」。レーザー加工では、加工後に製品が切り離されないように、金属板とパーツの間に加工しない領域であるジョイントを残して加工する必要があるのだが、取り外しや取り外した後のジョイントの処理に手間が掛かる課題があったという。ライトジョイントは、ジョイント断面積の低減や、ジョイントの強度を調整することで、切り離しの手間を低減し、作業の簡素化を図ることができるという。

  • 実際にレーザー加工が行われている様子

    実際にレーザー加工が行われている様子

そして3つ目は、加工条件の調整後に元の条件との比較や元の条件への復元ができる技術「加工パラメーター編集機能拡張」。従来、加工不良が起きた際、現場のオペレーターがパラメーターの設定を変えてしまい、加工不良が進んでしまったり、加工機にダメージを与えてしまったりする課題があったという。

この加工パラメーター編集機能拡張では、オペレーターごとの熟練度に応じて加工パラメーターの変更権限を付与することが可能なため設定ミスを防ぐことができるほか、加工条件調整後に元の条件との差分比較や、元の条件へ復元することが可能になるとのこと。

  • ファイバーレーザー加工機「GX-Fシリーズ」のアップ写真

    ファイバーレーザー加工機「GX-Fシリーズ」のアップ写真

また新システムとして、素材の供給から加工後の搬出までの連続運転を可能にする自動シートチェンジシステム「FOTシリーズ」にL型も追加するとした。従来、縦に長いI型配置があったが、縦に長いレイアウトでは工場の大きさに合わないケースがあり課題だったとし、長手方向の設置スペースを短縮したL型配置を開発することで工場の形に合わせてレイアウトを選択することを可能にした。

なお三菱電機は、「(レーザー加工機を利用する顧客に対して)まだ浸透が足りない部分もあるが、新戦略の発表以来10社ほどの導入実績があり、今後はリモートサービスで状況をみながら提案を続けたい」としている。新機能については引き続き毎年アップグレードを図っていくということを認識してもらえるようにしたいと担当者は語っており、そうした付加価値を武器に「グローバルで年間500台」の販売を目指していくとのことだ。