三菱ケミカルグループ社長に筑本学氏 ギルソン氏は「再編」道半ばで退任

「再編は間違いなく必要。大きく業界を変えないと生き残っていけない」─こう話すのは、三菱ケミカルグループ次期社長の筑本学氏。

 2023年12月22日、三菱ケミカルグループは24年4月1日に社長に現在エグゼクティブバイスプレジデント(副社長に相当)を務める筑本氏が昇格、社長のジョンマーク・ギルソン氏は退任する。

 社外取締役で指名委員会委員長の橋本孝之氏(日本アイ・ビー・エム名誉相談役)がギルソン氏に社長交代を告げたのは12月18日のこと、ギルソン氏の様子は「落胆の色がなかったと言えば嘘になる」という状態だった。まさに道半ばでの退任。

 ギルソン氏は21年12月に自社の石化事業、炭素事業の分離、業界の「石化再編」を打ち出した。「私達は日本で最大の石化事業を持っている企業として、再編プロセスを推進していく責任がある」と話していた。

 当初は23年12月までに他社との合弁事業の設立に向けた計画を公表するとしていたが、交渉は進展せず。この石化再編の進展は「評価項目の1つ」(橋本氏)だったが、今回の退任の大きな要素となった可能性は高い。

 実際、他社は再編の必要性は理解しながらも「それぞれの会社でエチレンクラッカーの位置づけが違い、『多すぎるから減らそう』という単純な話では済まない」(総合化学大手首脳)との反応だった。

 筑本氏は生え抜きで、経営企画の他、足元では石油化学事業を手掛けるベーシックマテリアルズ事業を担当。「石油化学業界の構造は複雑。丁寧な会話を重ねることが必要で、短い時間で動くのは難しい」と話す。

 ギルソン氏の構想を見直し、今後は24年秋頃に再編を含めた計画を公表する予定。しがらみのない改革を求めて起用した外国人社長だったが、その過程では「多くの有為な人材が失われた」(筑本氏)。生え抜き社長で、この間失われた求心力を取り戻し、再編、事業変革を進めることができるか。