大阪公立大学(大阪公大)は2月28日、加齢と性別による「足関節底屈運動速度」(足首を素速く動かす能力)の変化を検証するため、18~91歳までの550名を対象に底屈運動速度を計測した結果、加齢に伴い底屈運動速度は約26%低下するものの、男女間ではその能力に差がないことがわかったと発表した。
同成果は、大阪公大大学院 リハビリテーション学研究科の金山篤樹大学院生(大阪府立大学大学院 総合リハビリテーション学研究科)、同・岩田晃教授らの研究チームによるもの。詳細は、英オンライン総合学術誌「Scientific Reports」に掲載された。
歩行は、どの年代にとっても健康を維持するのに有効な運動だが、特に高齢者の場合は歩けなくなると外出が減り、それがさらに認知症の発症や悪化につながることも多いなど、歩行機能の維持は重要だ。
高齢者の歩行速度に関わる下肢機能として、足関節底屈機能の重要性が多数報告されている。研究チームのこれまでの研究でも、足関節底屈の筋力(強い力を出す能力)だけでなく、運動速度(素早く動かす能力)も歩行にとって重要であることが見出されていたが、足関節底屈運動速度の基礎的な特性については明らかにされていなかったとする。そこで研究チームは今回、底屈運動速度が加齢に伴ってどのように変化するのか、また男女間でその機能が異なるのかなどの機能特性を明らかにする研究を行ったという。
今回の研究では、18歳から91歳までの健常成人550名を対象に、まず足関節底屈運動速度と足関節底屈筋力の計測が行われた。対象者は若年群(18~39歳)、中年群(40~64歳)、前期高齢群(65~74歳)、後期高齢群(75歳以上)の4つの年代グループと男女2つの性別グループに分類され、各機能の加齢変化と性差についての検討が行われた。その結果、底屈運動速度は若年群から後期高齢群にかけて約26%低下し、底屈筋力と同様の加齢変化を示すことが明らかとなった。
その一方で性差に関しては、底屈運動速度の男女間での差は1%未満であり、底屈筋力とは異なる特徴が示されたとのこと。さらに単回帰分析により、底屈運動速度に対する底屈筋力の寄与率が16%と小さな値を示したことから、運動速度は筋力に依存しない独自の性質を持つ機能であることが明らかにされた。
歩行速度の向上を目的としたリハビリテーションとして、筋力トレーニングが広く行われている。しかし今回の研究により、歩行速度に大きく関わる機能の1つである運動速度が、筋力とは独立した機能であることが示された。今回の成果から研究チームは、効果的に歩行速度を改善するためには、筋力だけではなく運動速度の向上にも焦点を当てたトレーニングが必要であることが考えられるとする。
また、今回の研究で示された足関節底屈運動速度の加齢変化や性差に関する基本的な情報は、今後、効果的な介入方法を検討する上で有用な知見になることが期待されるとのこと。研究チームでは現在、底屈運動速度の向上を目標にした運動機器の開発や実証実験を進めており、効果的な運動速度トレーニングの実用化を目指すとしている。